私に出会ってくれて、本当にありがとうございました。

嬉野K

第1話

 えーっと……こんにちは。……あいさつはこんな感じでいいのかな?


 あはは……こうして会ってみると、どうやって接していいかわからないものだね。


 久しぶり。元気してる? 私は元気だよ。まぁキミも元気だろうね。

 

 キミと会うのはいつ以来かな……3年は会ってないよね。

 キミと会えない間、ずっとキミのことを考えていたようなきがするよ。なーんてそれは誇張気味だね。学校のことだって考えていたし、就活の事だって考えてた。遊ぶことだって考えていたよ。

 

 でも、キミのことを考えていた期間が一番長かったのは確実。


 ……会いたかった……


 ほらほら暑いでしょ。水でもどうぞ。はっはっは、頭から被ってしまえ。これで多少は涼しくなっただろう。


 ……


 ……なんというか……こうして会うと、何を話せばいいかわからなくなるね……

 話したいことは、いっぱいあったはずなんだけどな……


 いつもそうだよね……キミは無口だから、話題の提供はいつも私からだ。

 でも……ゆっくり話を聞いてくれる人っていうのは、結構貴重なんだよね。この3年くらいで実感したよ。


 この3年で、キミより優秀な人とは出会ったよ。それもたくさん。キミより頭の良い人なんて山ほどいる。


 この3年で、キミより運動神経の良い人とは出会ったよ。これもたくさん出会ったね。キミより運動できる人は、結構いたよ。


 キミよりイケメンな人とも出会った。キミより背が高い人とも出会った。キミより……えっと……絵がうまい人とも出会った。

 ……絵に関してはキミが下手すぎただけか……


 とにかく、キミより凄い人とは、いっぱい出会った。これからも、出会うと思う。

 

 でもね、最近気づいたんだ。


 その凄い人達は、自分の機嫌に左右されるんだ。


 嫌なことがあれば不機嫌になるし、それを表に出してしまう。嫌いな相手には露骨に不快感を示すし、相手のいないところで陰口を言ったりする。


 キミはそういうのなかったよね。


 ずっと笑顔だった。良いときも悪いときも、どんなときでも他人の悪口は言わなかった。どんなときでも、キミは安定していた。


 嫌なことがないわけじゃない。キミにだって、嫌なこと、嫌いな相手だっていたと思う。


 だけど……キミはずっとキミだった。相手によって態度を変えることもなく、不機嫌さを表出させることもなかった。


 それがどれだけ難しいことか、最近になってようやくわかった。


 私もね、イライラしちゃうんだ。わからないことがあったら逃げちゃうし、嫌いな相手とは話したくない。すぐ泣いちゃうし、不機嫌になってしまう。


 キミに憧れて、できる限り平常心でいようと思ってるんだけどね……


 憧れて? わぁちょっと待って今のなし。なんか小っ恥ずかしいや。聞かなかったことにして。


 コホン……とにかく……なんの話だっけ?

 

 そうそう。3年経ってようやく、君の凄さに気づいたという話だよ。


 キミのことを思い出すと、いつも楽しい時間を思い出す。

 キミのことを考えると、幸せな気分になれる。

 まるで魔法みたいだね。私にはできない芸当だ。


 ……なんだかしんみりしちゃったね……ごめんごめん。久しぶりだからさ、本当に何話したらいいかわからないんだ。


 何話しても良いってのはわかってるんだけどさ……キミは私の話はなんでも聞いてくれるから。


 ……


 そうだね……じゃあ、ちょっと思い出話でもしようか。


 私とキミが、はじめて会ったときのこととか。

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