第6話
「怪我は無いか」
「うん、大丈夫」
「大丈夫なら先を急ぐぞ」
マイが触手のモンスターのクーパに襲われていたから助けたんだが、この程度のモンスターに手こずっていたらこの先が思いやられる。
俺はこの依頼を達成してシューヤさんに認めてもらう。
シューヤさんは俺の憧れであり、目標でもあるからな。
なのに、シューヤさんはなぜかジンを気に入っているような感じがする。
あの魔力無しの何が良いんだよ、この学園に入ったのも裏口みたいな事なのによ。
そもそも今日の依頼にマイと邪魔な奴がついて来たが、俺は俺1人の方が絶対に早く終わったのによ。
マイがいたらこいつを庇いながら戦う事になるかもしれんから俺1人の方が絶対に良かった。
ジンも邪魔だったが、まぁ自分からどこかへ消えて行ったから望んでもない状況だ。
「目的地まで遠くない。さっさと終わらせるぞ」
「ちょっと待って!」
また目的地まで歩を進めようとしたらマイに止められてしまう。
「何だよ」
「ジンくんはどうするの?」
「どうするって放って行くに決まってるだろ」
何を分かりきった事を聞いてくるんだこの女は。
あいつなんかいてもいなくてもどっちでも良い存在なんだからいない方が良いに決まっている。
やっと邪魔者が消えたからここからが本番だ。
「あの…、それって大丈夫なんですか?」
「大丈夫だ、魔力が無い奴なんかが死んでも誰も悲しまないからな」
あいつの筋肉を見る限り雑魚モンスターには負けないだろう。
たとえ魔力が無くても生きて帰れる事が出来るかもしれない。
「それにオズマサール学園から死者が出てもそこまで話題にならないからな」
オズマサール学園は自分が強いと思っている命知らずがそこら中にいるから別に死者が出てもおかしくない。
「そうなんだぁ〜良かったぁ〜」
?
「私ジンくん苦手だったからどっか行ってくれて良かったよ」
……。
「そもそも魔力無いのにこの依頼受ける意味が分からないし、ちょっとこっちが話しかけたらグイグイ来るし、本当にしんどかったの」
…女こわっ。
「あなたもジンくんが苦手な感じがしたから同類ね」
「そうかもな」
さっきまで猫かぶってたのか。
まぁ俺としてはこっちの方が気が楽だ。
「確かこの辺だよな」
ジンの悪口大会をしていたら目的地の近くまで来ていた。
「うん、確かこの辺のはずだよ」
目的地に近づくにつれて嫌な空気が流れてきて気味が悪いし、モンスターが一匹もいなくなった。
今は周りから音もせず、緊張感がある。
「おい、気をつけろよ。いつどこで敵が現れるか分からないぞ」
なんだ…、この嫌な感じは。
今まで生きてきてこんな身震いするような張り詰めた空気感は初めてだ。
俺が生きてきた中で一番強い奴と戦う事になるかもしれない。
「すごい空気が重い」
マイもこの空気感を感じているようだな。
「おい」
「なに?」
「いざとなったら俺を放ってすぐに逃げろよ。ちょっとまずいかもしれない」
「変なこと言わないでよ。レンくんってミリヤさんに勝った事あるよね?じゃあ大丈夫だよね?」
「そのミリヤより強いかもしれない」
ドンッ
何かが俺たちの目の前に現れた。
「嘘っ」
そう言ってマイは両手で口を抑える。
俺も今起きている状況が嘘であってほしかった。
「フェンリル」
なんでこんな場所にいるんだよっ…。
***
「染みる〜めっちゃ染みてる〜」
なんだよ、まだ目が痛いんだけど。
いつになったら川に着くんだよ。
俺は早く川に行って顔を洗ってラッキースケベを見てやるんだ!
待ってろよラッキースケベ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます