第17話 今度会えたら……(2/2)

「行けーーー!!」

 アンジュのゴーサインとレオの声が重なった。ゴムを押さえていた手をはなす。プロペラがクルクルと回り始める。


 シュッ!


 レオは空に向かって飛行機を放った。

 向かい風に乗って、飛行機はぐんと空へとのぼっていく。レオと学は青い空を見上げた。

(やった!)

 アンジュを乗せた飛行機は、どんどん遠ざかっていく。自分たちの作った飛行機がだれかを乗せて大空を飛ぶなんて、なんて気持ちがいいんだろう。


 すごいすごい!


 ああ、でもこれでおわかれなんだ。

 ちょっとだけ、さみしいな。


 その時。

 ザザザッという音とともに、広場の木々がはげしくれた。

「うわっ!」

 きつける強い風にレオと学は思わず目をつむる。細めた目で上空を確認かくにんすると、なんと飛行機は上昇気流から大きく外れ、背中せなかを下に向けてしまっていた。

「ええー!? なんでだよ!!」


 目を見張みはるレオ。飛行機の頭が下を向き、下降かこうを始める。

「なんでなんで!? 嵐はまだ来ないって言ってたじゃないか!!」

 レオは両手を強くにぎりしめる。このままじゃ飛行機はまっさかさまだ。


「心配するな。これは嵐じゃない。ただの強い風だ」

「そんなんどっちでもいいよ! どうしたらいいんだよ! アンジュ、落ちちゃうよ!!」

 レオは地団太じだんだんで、空を指さす。

 こんな大変な状況じょうきょうなのに、学はいつも通り冷静れいせいだ。

「あわてるなレオ! 信じよう! アンジュは風を読むのが得意とくいだと言ったじゃないか」

「ええ~!?」

 信じれば、どうにかなるのかよー!?

「アンジューーー!! 体をかたむけて、立て直すんだーーー!!」

 急降下きゅうこうかする飛行機に、レオはいのりをこめて、力いっぱいさけぶ。


 すると飛行機は空中で宙返ちゅうがえりして、背面飛行はいめんひこうをやめた。それからまるでスピードを出したバイクがコーナーをまわるみたいに、ギュインと大きくかたむきながら向きを変え、レオの方へと向かってきた。

「レオーーー!!」

 アンジュのさけび声とともに、プロペラの回るブロロロロという力強い音が近づいてくる。そしてレオのすぐ横をビューンと横切った。

「気がついたんだけどー! これがあればわたし、いつでも遊びに来れるねー!」

 

 そして、また上昇気流に乗り、一気に空へと昇って行った。


「な……なに? 今の……?」

「飛行機を自在じざいあやつれるようになったんじゃないか?」

 じゃあ今のは風に飛ばされたんじゃなくて、それを見せるためにわざとやったこと?

 心配したっていうのに?


(でもそっか。またいつか、会えるんだ。今度はぼくの作った飛行機に乗って)


「アンジュー!!」

 レオは空に向かってさけんだ。

「また遊びに来るの、待ってるよー!!」

「今度来た時は、いっしょに“んどん”を食べようー!!」

だけにー!」

 小さく小さくなっていく飛行機に向かって、2人はコントをおくる。


「聞こえたかなぁ」

「どうだろうな。それより、見たか?」

「うん。アンジュ、元気な姿すがたに戻ってたね」


 見上げる真っ青な空には、綿雲わたぐもがゆっくり流れている。飛行機の姿すがたはもう見えなくなっていた。


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