第10話
私とエイルは、央都への道を歩んでいた。
――そいつはアリアというんだ。なかなか有名人だから町で聞けば辿り着けるはずだぞ
先ほど出会った、ご老人――ジュイ殿の言葉を思い出していると、エイルが口を開く。
「ねぇマリーさっきの、ジュイ殿が話していたこと。感情が精神までも支配することがよくあることって言ってたけど・・・それを調べている詳しい人にこれから会いに行くんだよね?」
「うん、アリアていう名前の子だよね」
「町では有名人で・・・」
「・・・学者気取りの子!」
「ふふっ」
エイルはくすっと笑ったが、でもどこか不安、畏れを感じているようだった。
感情は私たちの内側から湧き上がるもの。私たちが感じたものが感情として現れる。
だから、感情というのはコントロールできるものだと思っていた。
あんな悲惨なことが起こるまでは。
でももし、コントロールできずに感情が完全に精神までも支配されるようなことが起きたら・・・
きっとエイルも同じようなことを考えているのだろう。
「アリアって子はもしかしたら、感情をコントロールする方法を知っているかもしれないね」
「・・・うん、そうかもね。まずは央都に行ってどこにいるのか聞いてみよう」
央都はここからムルカオの森を抜け、道なりに北西を目指すとたどり着く。
一本道だが、とても距離があるので途中、アーガラムの町で休むことにした。
私とエイルはラーンの宿屋と書かれた表札の建物の扉を開ける。
「すみません、一泊したいのですが」
「えーと・・・2階の東側の角部屋が開いているわ。ここに名前を書いたら自由に使っていいわ」
宿屋というのは各方面から旅人が集まる場所。もしかしたらなにか知っているのではないかと思い、エイルが手続きをしている間、私はふと女将さんに聞いてみた。
「あの・・・ご存知か分かりませんが、央都にいるアリアさんってご存知ですか?」
「・・・会ってどうするの?」
女将さんの顔が一瞬こわばった。
「彼女に聞きたいことがあるのです」
「ほう〜きみら・・・彼女に用かい?」
ちょうど、階段を降りてきた旅人らしき人が声をかけてきた。
彼女――アリアのことを知っているようだ。
「ご存知なんですか?」
「まあな。・・・彼女は央都の中心にある塔の最上階にいる。だが・・・実験好きでな、う〜ん、君たちは耐えられるかな・・・でも―― どうしても、というのなら行って会ってみるがいい。だが、きっと後悔するぞ」
作者 心桜鶉さん
https://kakuyomu.jp/users/shiou0uzura
代表作「お悩み探偵シエルの事件簿 番外編」
https://kakuyomu.jp/works/16816927863262331937
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