(三)-4

 というのも、中から人が二人、出てきたのだ。そのうち一人は松葉杖をついていた。

 有紗はその松葉杖をついた人の顔を見ると、とっさにその人に抱きついた。それは松橋明だったのだ。

 首に手を回し、明に口づけした。目からは涙があふれ出て頬を伝い、何粒も地面に落ちた。

「海に落ちてなかなか浮かんでこなかったから、待機していたスタッフさんと地元の漁師の人が助けてくれたのよ」

 もう一人の男性がお姉口調でそう言った。この人が明のマネージャーの荒尾力だった。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る