(一)-2

 そうして有紗が「ちょっと聞いてよ」と言った。

 弥生は「なになに」と興味深そうに身を乗り出した。

「実はね、最近心配事があって」

「何があったの? 彼氏の浮気とか? ついにあの陣原部長に誘われたとか?」

「ううん、、実はね……」

 そう言いよどんだ後に、有紗は話し始めた。

 彼氏である松橋明はスタントの仕事をしているが、その仕事で毎回のように怪我をして帰ってくる。有紗はそのことがいつも心配であった。

 松橋明はもともと俳優志望だった。大学生の頃から演劇サークル「劇団あなぐま座」に所属しながら芸能プロダクションにも所属しており、十を超える作品にセリフのない端役で出演したが、同時に何回かスタントの仕事で呼ばれる機会があった。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る