仕事中の電話

筑紫榛名@12/1文学フリマ東京え-36

(一)

「行ってくるね」

 スーツ姿の瀬高有紗はTシャツとトランクス姿で頭に寝癖をつけたままの松橋明に唇を出してキスをせがんだ。

 松橋がすぐにそれに応えて「いってらっしゃい」と言うと、有紗は笑顔で手を振って玄関を出た。




 正午を過ぎた頃、有紗は職場の友人である田代弥生と一緒に勤め先の会社の入るビルから出てきた。そして近所の定食屋に入った。

 二人が注文した日替わり定食のお皿やお椀の中身の残りが少なくなってきた頃には、二人の話題は料理からお互いのことに移っていた。


(続く)

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