第7話『幽霊屋敷⑥ セン子の暴走』
セン子の一撃を喰らわずに済んだジー。
ジー「サスガにアレを喰らってたらヤバかったかもな…。」(立ち上がって)
終夜「でよ、オレもナナって呼んで…。」
と、言いかけた終夜が菜々子の方を見るが…。
菜々子「ヤベェよ…ヤベェよコレ…。絶対チコ出るじゃんよ…。」
焦った様子で目を泳がせてブツブツと呟いていた。
終夜「聞こえてねぇな…。」
セン子「オイそこのクソガキ。」
終夜「あ?なんだよババア。」
セン子「オマエの言う通り、私はニンゲンじゃない。。」
終夜「そうかい。」
セン子「そしてココの持ち主ってのも本当よ。」
終夜「へぇ。」
終夜は特に興味が無いようで、冷ややかな目でセン子を見ている。
セン子「だからこの建物は誰にも渡さないッ!!!」
セン子がそう叫ぶと同時に、更にセン子の右腕の筋力が増大した。
終夜「おい!!現実逃避しとる場合か!!!」
流石にヤバいと判断したのか、終夜が焦って菜々子に叫ぶ。
菜々子「ハッ!アタイったら、ついチコに想いを寄せてたわ…。イェス、フォーリンラブ!」
終夜「このババア人間やなかった!そしてヤベェ!!」
セン子「この自慢の足は、飾りじゃないのよ涙は、っハッハァ~~~ッ!!!」
ボケなのかすらも分からない意味不明な発言をするセン子。
次の瞬間には、ドンッ!という音と共に地面を蹴って飛び出す。
ジー「!!!」
一瞬でジーの目の前に移動し、再び勢いよく右手を振り上げるセン子。
終夜「そっちかよ!!」
終夜もジーの方へ走り出すが、如何せん人間離れしたセン子の動きに追いつけるハズも無く…。
セン子「ババアタック!セカンドシーズン!!」
ジー「マジかよ!!」
その一撃を、また避ける暇もなく再び腕を交差して受けたジー。
ズドン!!という音と共に、その衝撃で、地面がエグれ爆散した。
暫くして、土煙が晴れた後に立っていたのは…。
セン子「ドイツもコイツも生意気なんだよクソガキが。」
ジーの姿は、ドコにも見当たらなかった。
終夜「オイ!ババア!オマエも人間じゃなくて、しかもこの建物の持ち主なら、チビと面識あったんじゃねぇのかよ!この建物に住む仲間なんじゃねぇのか?」
セン子「…。」
その終夜の言葉が聞こえていないのか、セン子は無反応だ。
終夜は、ややセン子と距離を取った。
セン子「私は、言わば女王。このクソガキが消滅したところで、このシェアハウスに入居したいってヤツァ腐る程居るんだ。」
終夜「じゃぁ何でアイツを連れて現れたんだよ。」
アイツとは、博記の事のようで、終夜は、何故か事情を把握しているようだ。
セン子「私は、さっきも言ったようにニンゲンじゃない、と言ったが、ニンゲンでもある。街中で、私を認識しているアイツを見つけた。声をかけると、ホイホイついてきたわ。」
よく分からない事を言うセン子だが、ようは人間と霊の中間に存在する、といった事を言いたいらしい。
終夜「…。」
セン子「そしてアイツを殺し、この建物の住人にしようと考えた。ソコに、私の留守中に、オマエラが居て、好き放題ヤッてたってワケさ。」
壱馬「なるほどな…。新しい住人を探し、貢がせようとしていたワケだ。のクセに、サッキのヤツは簡単に消したりと…いささか理解に苦しむが…。」
セン子「人間のフリをして、穏便にキサマラを帰らせようと思っていたが…私のお気に入りのピーチを傷つけた事は絶対に許さない。」
菜々子「あ、ソレはソイツです。」
終夜を指さしながら菜々子は即答した。
終夜「え?ピーチ?その名前自体初耳やぞ!」
菜々子「まさかこのババアがクッパだったなんて…。」
終夜「クッパとか具体的に言わずにラスボスとか言っとけよ…。」
セン子「覚悟は出来てるな?クソガキ…。」
セン子は、ニヤリと不気味な笑みを浮かべた。
終夜「クソ…。」
終夜の額には、汗がにじんでいる。
琴羽の依頼で助太刀に来た事を後悔でもしているのか。
セン子「心配するな。死んだ後は成仏なんかさせずに、ずっとココに住ませてやるから。」
終夜「死んでもゴメンだな。こんなトレーニングジムから遠いようなトコに住むのは。」
終夜は大真面目な顔をしている。
菜々子「えっそこ?」
終夜「こう見えてもオレは鍛えてるんだ。あと、たまにマリオカートしてる。」
菜々子「要らんわその情報。」
セン子「えっ!?私もマリオカートしてるの!フレンドならない?」
パッとセン子の表情が輝き、キラキラした目で終夜を見ている。
終夜「フレンド?そんな機能は無い。オレがやってんのはスーファミのマリオカートだ。」
菜々子「あっ…そっち…。」
セン子「時代遅れの腐れ外道がぁ!!!」
そう叫ぶと、更にセン子の筋力が増大した。
終夜「外道…?スーファミやってるだけなのに…?」
時を戻そう。
コチラは、シェアハウス内部。
2階の窓ガラスを突き破ってフッ飛んで来た博記。
その隣には、同じ窓からフッ飛んできたピーチが気絶している。
博記「イテテテテ…。」
博記は、何が何だか分からないまま体を起こし、頭を数回振って、正気を取り戻した。
その隣にはギャル(もはやギャルとは程遠い出で立ちになったが)が気絶している。
博記「えっ?コレ何?何か鎧みたいの着てる金髪の若い女?」
博記は、フッ飛んだ衝撃で、記憶が曖昧になっているようだ。
博記「あれ?オレ今日そんなに飲んだか?しかし、いくら酔っぱらったとしても、こんな趣味は…。」
等と、結構危ない事を考えている博記。
ピーチ「うぅ~~~ん…。」
博記が独り言をブツブツ言っていると、ピーチも気が付いたようだ。
博記「あ、あの~…。」
ピーチ「うん?」
ピーチも、まだ頭がハッキリとしていないようで、ボンヤリした顔を博記に向けた。
博記「えっと、…大丈夫ですか?お嬢さん…。」
ピーチ「お嬢さんだなんてそんな…ウチはただのギャルですぅ…。チョベリグ。」
何故かぶりっ子を始めるピーチ。
博記「えっ?これギャル?」
ピーチ「そんなあんまジロジロ見ないでよぉ…。」
博記「可愛い…。」
ピーチ「ねぇ…オニーサン…。」
おもむろに、博記の両肩を包むように腕をまわすピーチ。
博記「ひゃい!!」
博記は、顔を真っ赤にして体を硬直させた。
ピーチ「私と、イイコトしちゃう…?」
そのまま、博記を抱き寄せるピーチ。
博記「マ…ママママ………マジか…。」
そうして、徐々に博記に顔を近づけるピーチ。
その途中で、ピーチの兜の装飾の先端が、博記の頭に刺さる。
博記「いって!!!」
ピーチ「メンゴメンゴォ。」
ピーチは、兜を脱ぎ捨てた。
博記「可愛い…。」
ピーチ「お詫びに…。」
再び博記を抱き寄せ、顔を寄せるピーチ。
そこに、細い鉄パイプを肩にかついだ凪兎が姿を現す。
凪兎「あっ居た!おいエロ!!」
しかし、その隣にピーチが居るのに気づき、足を止める凪兎。
凪兎「ん…?」
二人の様子がオカシイ事に気づく凪兎。
その視線の先には、密着している博記とピーチ。
凪兎「オマエラ何やって………まさか…。」
そして、少し経ち、博記がピーチから離れ、立ち上がる。
凪兎「オマエ!正真正銘のエロになっちまったんか!幽霊相手にナニやってんだよ!!」
ユラリと凪兎の方へ歩を進める博記。
凪兎を見据えている眼光は虚ろだ。
凪兎「あ?」
と、次の瞬間、凪兎に向かって飛びかかる博記。
凪兎「チョ待てよ!!」
咄嗟に持っていた鉄パイプで、博記の胴を目がけて薙ぎ払う凪兎。
博記「!!!」
凪兎の一撃を喰らい、フッ飛ぶ博記。
凪兎「はっ…。ヒロ!!大丈夫か!!!?」
慌てて博記に駆け寄ろうとするが、またユラリと立ち上がる博記。
凪兎「………。」
凪兎の額には、汗が浮かんでいた。
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