第7話『幽霊屋敷⑥ セン子の暴走』

セン子の一撃を喰らわずに済んだジー。


ジー「サスガにアレを喰らってたらヤバかったかもな…。」(立ち上がって)


壱馬「で、ナナ。」


菜々子「ヤベェよ…ヤベェよコレ…。絶対チコ出るじゃんよ…。」(小声でブツブツ呟いている)


壱馬「聞こえてねぇな…。」


セン子「オイそこのクソガキ。」


壱馬「あ?なんだよババア。」


セン子「オマエの言う通り、私はニンゲンじゃない。。」


壱馬「そうかい。」


セン子「そしてココの持ち主ってのも本当よ。」


壱馬「へぇ。」


セン子「だからこの建物は誰にも渡さないッ!!!」


セン子がそう叫ぶと同時に、更にセン子の右腕の筋力が増大した。


壱馬「おいナナァ!!現実逃避しとる場合か!!!」


菜々子「ハッ!アタイったら、ついチコに想いを寄せてたわ…。イェス、フォーリンラブ!」


壱馬「このババア人間やなかった!そしてヤベェ!!」


セン子「この自慢の足は、飾りじゃないのよ涙は、っハッハァ~~~ッ!!!」


ドンッ!という音と共に地面を蹴って飛び出すセン子。


ジー「!!!」


一瞬でジーの目の前に移動し、再び勢いよく右手を振り上げるセン子。


壱馬「そっちかよ!!」


壱馬もジーの方へ走り出すが、如何せん人間離れしたセン子の動きに追いつけるハズも無く…。


セン子「ババアタック!セカンドシーズン!!」


ジー「マジかよ!!」


その一撃を、また避ける暇もなく再び腕を交差して受けたジー。

ズドン!!という音と共に、その衝撃で、地面がエグれ爆散した。


暫くして、土煙が晴れた後に立っていたのは…。


セン子「ドイツもコイツも生意気なんだよクソガキが。」


ジーの姿は、ドコにも見当たらなかった。


壱馬「オイ!ババア!オマエも人間じゃなくて、しかもこの建物の持ち主なら、チビと面識あったんじゃねぇのかよ!この建物に住む仲間なんじゃねぇのか?」


セン子「…。」


壱馬は、ややセン子と距離を取った。


セン子「私は、言わば女王。そんな立場に在る私が、一般市民と、イチイチ接触すると思う?このクソガキが消滅したところで、このシェアハウスに入居したいってヤツァ腐る程居るんだ。」


壱馬「じゃぁ何でヒロを連れて現れたんだよ。」


セン子「私は、さっきも言ったようにニンゲンじゃない。だが、街中で、私を認識しているアイツを見つけた。声をかけると、ホイホイついてきたわ。」


壱馬「アイツ、心霊モノの見過ぎで霊感が…?」


セン子「そしてアイツを殺し、この建物の住人にしようと考えた。ソコに、私の留守中に、オマエラが居て、好き放題ヤッてたってワケさ。」


壱馬「なるほどな…。新しい住人を探し、貢がせようとしていたワケだ。」


セン子「人間のフリをして、穏便にキサマラを帰らせようと思っていたが…私のお気に入りのピーチを傷つけた事は絶対に許さない。」


菜々子「あ、ソレはソイツです。」(壱馬を指さして)


壱馬「え?ピーチ?その名前自体初耳やぞ!」


菜々子「まさかこのババアがクッパだったなんて…。」


壱馬「クッパとか具体的に言わずにラスボスとか言っとけよ…。」


セン子「覚悟は出来てるな?クソガキ…。」


セン子は、ニヤリと不気味な笑みを浮かべた。


壱馬「クソ…。」


セン子「心配するな。死んだ後は成仏なんかさせずに、ずっとココに住ませてやるから。」


壱馬「死んでもゴメンだな。こんなトレーニングジムから遠いようなトコに住むのは。」


菜々子「えっそこ?」


壱馬「オレぁバンドやってる時間以外は、寝る以外は大体鍛えてる。あと、たまにマリオカートしてる。」


菜々子「要らんわその情報。」


セン子「えっ!?私もマリオカートしてるの!フレンドならない?」


壱馬「フレンド?オレがやってんのはスーファミのマリオカートだ。」


菜々子「あっ…そっち…。」


セン子「時代遅れの腐れ外道がぁ!!!」


そう叫ぶと、更にセン子の筋力が増大した。


壱馬「外道…?スーファミやってるだけなのに…?」




時を戻そう。




コチラは、シェアハウス内部。

二階の窓ガラスを突き破ってフッ飛んで来た博記。

その隣には、同じ窓からフッ飛んできたピーチが気絶している。


博記「イテテテテ…。」


博記は、何が何だか分からないまま体を起こし、頭を数回振って、正気を取り戻した。

その隣にはギャル(もはやギャルとは程遠い出で立ちになったが)が気絶している。


博記「えっ?コレ何?何か鎧みたいの着てる金髪の若い女?」


フッ飛んだ衝撃で、記憶が曖昧になっているようだ。


博記「あれ?オレ今日そんなに飲んだか?しかし、いくら酔っぱらったとしても、こんな趣味は…。」


ピーチ「うぅ~~~ん…。」


博記が独り言をブツブツ言っていると、ピーチも気が付いたようだ。


博記「あ、あの~…。」


ピーチ「うん?」


ピーチも、まだ頭がハッキリとしていないようで、ボンヤリした顔を博記に向けた。


博記「えっと、…大丈夫ですか?お嬢さん…。」


ピーチ「お嬢さんだなんてそんな…ウチはただのギャルですぅ…。チョベリグ。」


何故かぶりっ子を始めるピーチ。


博記「えっ?これギャル?」


ピーチ「そんなあんまジロジロ見ないでよぉ…。」


博記「可愛い…。」


ピーチ「ねぇ…オニーサン…。」


おもむろに、博記の両肩を包むように腕をまわすピーチ。


博記「ひゃい!!」


ピーチ「私と、イイコトしちゃう…?」


そのまま、博記を抱き寄せるピーチ。


博記「マ…ママママ………マジか…。」


そうして、徐々に博記に顔を近づけるピーチ。




その途中で、ピーチの兜の装飾の先端が、博記の頭に刺さる。




博記「いって!!!」


ピーチ「メンゴメンゴォ。」


ピーチは、兜を脱ぎ捨てた。


博記「可愛い…。」


ピーチ「お詫びに…。」


再び博記を抱き寄せ、顔を寄せるピーチ。

そこに、細い鉄パイプを肩にかついだ春彦が姿を現す。


春彦「あっ居た!おいエロ!!」


しかし、その隣にピーチが居るのに気づき、足を止める春彦。


春彦「ん…?」


二人の様子がオカシイ事に気づく春彦。

その視線の先には、密着している博記とピーチ。


春彦「オマエラ何やって………まさか…。」


そして、少し経ち、博記がピーチから離れ、立ち上がる。


春彦「オマエ!正真正銘のエロになっちまったんか!幽霊相手にナニやってんだよ!!」


ユラリと春彦の方へ歩を進める博記。

春彦を見据えている眼光は虚ろだ。


春彦「あ?」


と、次の瞬間、春彦に向かって飛びかかる博記。


春彦「チョ待てよ!!」


咄嗟に持っていた鉄パイプで、博記の胴を目がけて薙ぎ払う春彦。


博記「!!!」


春彦の一撃を喰らい、フッ飛ぶ博記。


春彦「はっ…。博記!!大丈夫か!!!?」


そしてまたユラリと立ち上がる博記。


春彦「………。」


春彦の額には、汗が浮かんでいた。

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