メアド
連喜
第1話 出会い
これは大学の同級生から聞いた話。
今から20年以上前。20代で彼女のいない男(Aさん)がいた。彼女が欲しくて、友達から女性を紹介してもらった。紹介と言っても、メールアドレスを書いたメモを渡されて、直接、連絡取ってね、というだけだったらしい。
俺も若い頃は色んな女の子を紹介してもらったことがあった。電話番号を教えてもらって、この子に電話してみてっていうのもあったし、Aさんと同じようにメールアドレスだけっていうのもあった。俺はあまり友達の紹介が好きじゃない。気に入らない相手でも断りづらいからだ。A君は彼女と別れたばっかりで、とにかく新しい彼女が欲しかったんだと思う。それこそ、誰でもいいというレベルだったみたいだ。
恋人と長く付き合って別れた時には、ひどくダメージを負うものだ。Aさんは、それを埋めたかったのかもしれない。合コンでも行けばよかったんだろうけど、A君は合コンに来るような子は嫌だったみたいだ。そういう子は、取り敢えず愛想だけはよくて、男受けを狙ってるタイプ。俺の世代だと、彼氏がいても行く子が多かった。だから、そこで出会ってつき合う人はあまりいなかった。そもそも、かわいい子が一人でいるはずない。
Aさんは取り敢えず、誰かわからない相手にメールを送った。
『はじめまして。友永君の紹介でメールしてみました。Aです。友永君の大学時代の友達です。今は〇〇〇に勤めてます。よかったらお返事ください』
しばらくして、返事が来た。
『はじめまして。こいうの初めてなんで、緊張します。よろしくお願いします』
A君と友永君は大学の同級生でゼミが一緒だった。たまに、みんなで会う時にいるくらいの関係性で、特別親しかったわけではなかった。
『最初にお名前聞いていいですか(^^)?』
『マユミです』
『片仮名の名前珍しいですね。どんなお仕事してるんですか?』A君が尋ねた。
『仕事はしてません。家事手伝い』
『いいですね。そういうの。うらやましい(>_<)』
A君はすごいお嬢様なんだと思ったそうだ。
『毎日つまらないですよ』
『僕も』
『どんなことをするのが好きですか?』彼女から質問が来た。
『映画に行ったり、旅行とか』
2人は初対面の人達らしく、お互いの自己紹介からスタートした。
『電話してもいい?』
A君はメールをちまちま送り合っているのも面倒なので、20分後くらいにはそう切り出した。A君は爽やかな好青年だった。人と話すのも慣れてるし、ちょっと前まで、勤務先に彼女がいた。出会い系に偏差値があるとしたら60くらいの万人受けするタイプだった。大企業に勤めているし、彼を断る人はいないだろうという感じだった。
Aさんは、同じ会社で付き合うと、苦労するから、次は人の紹介で・・・と思ったらしい。相手が同僚だと隠すのが難しい。一緒に歩いていると、知らない間に職場の人に目撃されてたりもする。やがて職場の人公認になって、周りに気を遣われるし、干渉される。うまく行っている時はいいんだけど、そうでないときはきつい。Aさんの彼女は、一見優しそうに見えたけど、職場で後輩をいじめたりしていたそうだ。それを聞いて、A君は、この子とは無理だなと思い始めた。それで、適当な理由をつけて別れを切り出したら、A君が浮気をして別れたことにされてしまったとか。結局、元カノは”自分は悪くないけど、A君が・・・”という流れにしたかったんだろう。やっぱり、別れて正解だったんだとA君は思った。
友達に紹介してもらった女の子は、家事手伝いで大人しそうな子だし、人に意地悪をしたりもしない気がした。そういうタイプのこといると安らげる。今度は外見で選ぶんじゃなくて、人柄重視にしようとA君は決めた。
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