怪奇SF4⃣
正雄は強酸性雨が降る中、鋼鉄の折りたたみ傘の柄を握りしめ、飛沫が掛からぬように歩いた。さすがに飛沫を浴びるのは不快だ。店先に石灰岩でできた果物が売っている。歯ごたえが良いものが京子の好物だったがこんな日に買っててもなぁと思い素通りした。もっと晴れた死にかけた腐ったようなこの星系の恒星が鈍く照らしてる日の方がよいかと思った。京子の気まぐれに、振り回されっぱなしだし、デートはしたいが、こんな雨の日に呼び出さなくても京子を恨みがましく思う。指定された場所である、時の公園に付いた。赤い傘を差し防弾仕様のコートを着た京子のほっそりした姿がチタンコーティングされた屋根付きの休憩所にこちらに背を向けてたっている。やはり、チタンコーティングされたベンチがあるのに座らず思わせぶりに佇む。京子の黒い髪がまぶしい酸性雨の飛沫が掛かったくらいでは乱れぬように強化されている。後姿を見てたら今日こそ告白しようと思った。行動しないで後悔するよりも、行動せずに後悔する方が、あとに残る後遺症が大きいというではないか、京子の反応を見て、まずはそれからだ。鋼鉄製の傘を投げ捨ててしまい、大理石の地面砕け散る激しい音は委細構わずが、もうそんな些細なことにかまっていられなく、
「好きだ」と叫んで京子を背後から抱きしめた。身体をピタリと寄せ合いふたりでベンチに座る。京子の体臭のアンモニア臭を大きく吸い込んだ。酸性雨の日も乙なものではないかと正雄は思い京子の細い肩を抱きしめた。成程恋はあたりの景色を薔薇色にする。京子が抱え持っていた二人分の火星ソーダをストローでごくごく飲み、互いの口吻を伸ばしから見合わせた。今日は何という日だ。人生最高の日ではないか?
「わたしはじめて、この地球という星が好きになったわ。最初はこんな辺境に仕事で飛ばされて最悪と思ってたけど、正雄ともこうして合えたしい~」正雄の額の突起物をさすりながら、京子は視線を雨に煙る死滅した都市の高層ビル群へ向けるので正雄も死滅した高層ビル群へ向けた。この星の前期支配階級にいたものが、新宿と名付けた都市の名残だ。
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