僕はその力で、異世界を渡る。

久遠 れんり

第一章 暴走時代

第1話 誰も信じてくれない、これが俺の日常?

 え~俺は、神地行人(かみちいくと)17歳 高校2年。

 信じられないだろうけど、本名なんだぜこれ。


 すぐ死ぬか、異世界転移か転生まっしぐらのような名前。


 しかし、起こりそうな出来事は起こらず。

 高校生まで、無事に生きてきた。

 だが友人はいない……。


 小学校の低学年までは。

 うそつき行人と呼ばれながらも、話ができる友達? が、幾人か居た。


 だけど。俺がドアを開ける。

 何もせず普通に。

 すると、複数回。知らないところへつながる。

 俺は、それが起こるのは、普通なのだと思っていた。

 

 それは、昔から起こる当然の事。

 なので、小学生の頃は、あまり気にもせず。


 学校へ行って。

 友人たちに報告もするよね。

 学校に来ようと思って、玄関を開けると、今朝は砂漠だった。とか、恐竜がいたとか。海の上だったとか。楽しく皆に語っていた。


 ところがだ。3年生くらいからは、親にあの子と付き合っちゃいけません。そう言われる子が多数あらわれた。

 必然として、一緒に遊んでくれる奴は、見事にいなくなった。



 そして皆と違う。その事実が確実になったのは、中学校に入学した初日。


 ほかの小学校から来た奴に、思い切り嘘つき呼ばわりされた。


「じゃあ見せてみろよ」

 そう言われて、教室のドアを開ける。目の前は砂漠だ。

「ほら、砂漠だよ」

「どこがだよ」

 そう言って、そいつは。普通に廊下へ出て行った……。


 そいつは廊下側から、教室の窓を開け。

「おまえ嘘つきだな」

 一言、そう言ったよ。


 なんでだよ。見えているだけなのか? 実際はどこにも繋がっていない?

 いや……。でも。


 前に出たときには、普通に向こう側へ行った。

 その時は、必死でドアへと戻ってきた。


 うん。とにかく、その日からぼっち。

 変わることのない不動の立ち位置。……まあそれは良いんだが。

 皆は普通に出られて、変なところににつながるなんてことは、絶対ないとの事。


 それからも、普通にドアを開けると。よく知らない所へとつながる。その時には、2~3回開きなおせば、普通に外へ出られる。

 たまに普通と思える所につながっても、知らないところは、やはり違和感がある。

 

 それが昔からの日常なので、皆そんなもんなんだろうと思っていた。実際親も、そんな事もあるさと言っていた。

 後で思えば、その親の言動に。おかしさに気が付けなかった。俺も悪いが……。


 僕は皆と違う。

 この現象は、自分だけに起こることだと知り。

 逆に興味を持った俺は、家へ帰り。

 少し長めのロープを準備した。


 一度向こうへ行って以来。

 帰れなくなったらと考えると、怖くて今まで決してしなかった。

 だが、少し向こうの世界に、足を踏み入れることを。

 試してみようと考えた。


 玄関脇の手すりに、ロープを括り付ける。

 もう片方を、自分の腰へ、カラビナという登山用の金具で取り付ける。


 そっとドアを開け。ドキドキしながらのぞき込む。


 ……森だな。


 見えているだけで、地面が無いといやなので、そっと足を踏み出す。……うん地面は在る。

 玄関にあった、傘の先を使い、その辺の落ち葉をかき混ぜ、さらにつんつんする。土があるのを、確認する。


 一歩踏み出す。


 とりあえずの武器として、傘を持ったまま。歩き始める。数歩歩いて振り返る。

 隙間から、ロープの出ている玄関ドア。

 まるで有名な、どこで○ドアのように立っていた。


 ほう。……なるほど。


 感心しながら、さらに進む。

 ロープは10mくらいしかないので、周辺だけだが。初めて来たドアの向こう。

 森は変わらず。ただ、木の大きさは、すごく大きい。

 視線の先にある木も、2~3人が両手を広げても、一周できない太さ。


 ふとロープが切れて、ドアが消えると怖いと不安になる。

 ヘタレな俺は、記念すべき第1弾の冒険を終了した。


 明日の帰りにでも、もっと長いロープかワイヤーを買って来よう。

 本格的な探検は、それからだと考えた。


 今まで、つまらなかった日常が、少し楽しみになった。

「ありがとう」

 名も知らぬ、よその小学校から来た奴。



 それから5年、色々な所を旅してきた。

 いろんなことも分かった。

 ロープが無くても、ドアはただ立っていて。

 現地の人には見えない。


 出る所を見られた場合は、突然何もない空間から、俺が湧いてくるようだ。

 それに、みんな日本語をしゃべっているが、字は読めない。

 等々。それなりに、うまく旅行ができて。今では楽しんでいる。



 いまだに。規則性はよく分からないが。5年も、ほぼ毎日。

 ドアをくぐっていると、分かったこともある。

 つながる先。つまり向こうは、一つの世界ではないようだ。


 たまに、人のいる所につながるが。その世界は、文明レベルが全然違う。石器時代から、現代を超えた所。見たことのない乗り物が、普通に空を飛んでいるような所まで。非常に差がある。


 それに人種も。

 どう見ても哺乳類じゃない人達や、耳やしっぽが生えている人達にも、会ったことがある。


 この。いろいろな出会いの中で、いろいろな体験をした。


 俺の初めては、15歳の夜。

 森の中で、全裸で暮らす人たちの集落だった。


 出会って、友好のために、お土産として持ち込んだ。果物やお菓子を、いくつか差し出すと、喜んでくれ、宴を開いてくれた。


 飲めと言って、笑顔で差し出された物は、木の器に入った。

 ちょっと酸っぱい。白い液体。


 飲んでも酸っぱかっただけで、よくわからなかったが、酒だったようだ。

 知らずに飲み。たぶん、薄いんだろうが、初めて飲んだ俺は、当然酔いつぶれた……。


 夜中にふと重みを感じて目を覚ます。

 結構かわいい子が、俺の上に跨がり。大事なところが、つながっていた……。

 初めてで、舞い上がった俺は、朝までに2~3回頑張ってから、集落のみんなに見送られて家へ帰った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る