第21話 ノロイノハコ伍
「わかった、つまり葛城ミカの言ってた不幸な出来事の原因は確かにあの箱だってことだな」
「そう。物分かりがいいね。古くから生き物の血や肉は呪術の媒介として使われるからな」
「それはわかった。……いやわからねぇけど……。俺それ以上聞いても理解できないだろうからいい。それは置いといて、何で俺はお前にキっキスされないといけなかったんだよっ。お前意味わかんねえんだよ」
明がぐちぐちと喚いていると、その唇を久斗がむにゅっと掴んだ。
「はひふるんは!」
「はは、のびーるのびーる」
そのまま唇をぐにーんと伸ばして笑う。その手をなんとか外させて明は怒鳴った。
「おいっお前マジでやめろっ」
「はいはい。ごめんって。でもキスは意味あるんだよ。てかキスじゃない。俺たちの言い方で言うと、霊力譲渡」
「霊力譲渡?」
「そ。お前より俺の方が基本的な能力スペックが高いからな。明が見えないものが俺にはミエるし、嗅げない臭いをカゲる」
「マウントとってくんな」
「羨ましいか? 生臭くて嘔吐いてたくせに」
久斗に鼻で笑われて、明は額に青筋を浮かべる。
「簡単に言うと、唾液を通して、俺の力の一部を明に流し込んだってことだ。だから一時的にヨクミエタし、ヨクニオッタ。わかったか?」
「お前が霊力譲渡とか言って誰にでもキスするキス魔だってことはわかった」
「微塵もわかってねーじゃん。ま、別に霊力譲渡はマウストゥマウスじゃなくてもいいけどな。でも、体液を媒介にするのが、一番効率がいい。ほぼ純度100%の力を流し込める」
久斗はそういうと、明の額に手をかざした。久斗の大きい手はひんやりとしていて、気持ちがいい。しばらくすると、久斗の手から何か温かいものがじんわりと伝わってきた。
「……これが正規の霊力譲渡ってことか」
「いーや。正攻法はセックスだよ。一番効率的だろ。今やってるのは簡易版霊力譲渡。これはエネルギーの無駄が多すぎる。俺が渡しているうちの50%しか明は受け取ってない」
「……そーかよ。もうなんか俺その話聞きたくない」
額にかざされた手も押しのけて、明が立ち上がる。
「もうそろそろ帰ろうぜ……明日から依頼のために動くんだろ?」
久斗は童貞には刺激の強い話をしちまったなと内心で思いつつ、これ以上からかうと、一緒に帰ってくれなくなりそうなので、明の言葉に素直に従って帰る準備をする。
「ああ。明も暇なら来いよ。葛城ミオにうちの事務所を紹介した【魔女】に合わせてやるから」
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