第9話 みえるものまもるものつかうもの伍

あっという間に登校初日の終わりのホームルームの時間になった。明日の連絡を終えて、先生が生徒たちに話を始める。

「えーっと、みんな大体インターン先は決まったかな。普通科も11月からインターン始まるから、ほとんどみんな書類出してくれたとは思うけど、まだの人は早めにね」

 明からすると初耳の話を先生がしている。しかし、それ以上の説明はなく、ホームルームは終わった。

「きりーつ、姿勢を正して、礼」

 普通科の学級長だという伊沢の声に合わせて、クラスメイト達は礼をした。終礼が終わってすぐに伊沢と山本をつかまえて、インターンの話を聞く。

「なあ、インターンって何?」

「え、先生から聞いてないのか?」

 全く聞き覚えはない。正直知らなったことがたくさん情報として入って来て、覚えてないだけか? とも思ったが、記憶を辿っても「インターン」の文字は出てこなかった。

「インターンって名前だけど、普通科からしたら長期の職場体験って感じかな。週に1回は学校じゃなくてインターン先で研修するの。普通科と予言科は2年の11月から卒業までだけど、祓師科と式神科は1年の後半にはインターン始まってるんじゃないかなあ。まあ私たちはそこまでガチじゃないから安心して」

「でも今から田町のインターン先探すの大変じゃね?」

「うーん確かに」

「ふたりはどこに行くんだ?」

「私たち一緒のところなのよね。氷縁神社っていう地元の神社。田町くんも紹介してあげたいんだけど、基本神主さんひとりで切り盛りされてるから、三人は無理かな……」

「先生に相談行ってみようぜ」

 山本の提案に明は頷いた。

「そうしてみる」

「一緒行こうぜ」

「いや、大丈夫。ひとりで行ってくる。今日はありがと、ふたりとも」

 転入初日、今までの自分の常識からは考えられない世界に放り込まれた気持ちで頭がぐつぐつしていたが、明るい山本と面倒見の良い伊沢の優しさに救われた。ふたりのおかげで、この学校でもなんとかやっていけるかもしれないという気持ちが芽生えていた。

「ほんと、ありがと」

 気持ちを込めてもう一度感謝を伝えると、ふたりともにこっと笑って、山本は明の髪の毛をぐしゃぐしゃと撫でまわした。

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