第5話 アイツはもう嫌いじゃない
「遅いなぁ」
私は今、遊園地のゲートで、ソワソワしながら彼を待っていた。
あれから私とジュンはカレカノになったが、一つだけ約束をかわした。
私達の関係を絶対に知られてはいけない、ということだ。
そうなった原因は同じ学校にいる彼の妹の存在が大きいだろう。もしマリが大好きなお兄ちゃんに彼女ができたらどんな事をするか分からないからだ。
情報屋であるアリサちゃんにも知られたらあっという間に学校中に広まり、マリの耳にも届いてしまうため、彼女にもバレないようにいつも通りを貫いた。
だが、それも平日と土曜日だけの話。日曜になれば、私達は誰の目も気にする事なく会える。
(約束の時間はとっくに過ぎている。それでも来ないのはもしや……)
最悪な事態を想像した時、突然視界が真っ暗になった。こんなイタズラをするのはアイツしかいないので、とりあえず後頭部でそいつの顔を殴った。
イテッという声がしたと同時に視界が明るくなったので振りかえる。そこには鼻をさすりながら涙目で私を見るジュンだった。
「ひどいじゃないか。驚かせようとしたのに」
そういう彼に私は、「周りから見たら襲われているように見えるよ」と忠告してあげた。
すると、彼は「ごめん」と落ち込んだ表情を見せてしまったので、私はすぐに「何事もなくてよかった」とほっぺにキスをしてあげた。
彼はたちまち顔を赤らめると、「あ、あの時の悲劇は二度と起こさないよ」と手を差し出す。
「そうだね」
ニッコリ笑って握り返す私。
そして、お互いに離さないようにしっかりと繋いだまま遊園地の中に入った。
何となく彼の横顔を見てみる。もうムカムカした気持ちはなくなっていた。
今はもう心がキュンキュンしてしょうがない。
完
分からないけど大嫌いなアイツ 三玉亞実 @mitama_ami
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