第3話 ポッカリ空いた心の穴。でも、なんで?
ボゥと5、6時間目を過ごして、気づいたら放課後になっていた。
アリサちゃんに「和太鼓部の練習があるので一緒に帰れない」と言われた私は、独りでモヤモヤしながら歩いていた。
すると、前にいる男女のカップルに見覚えがあった。アイツと、確かマリという名前だっけ。
特に意識してはいないが、自然とアイツらに気づかれない程度の歩幅で歩いていた。遠目から見るとマリが一方的に話して、それをアイツがウンウンと頷いている様子だった。
(デレデレしちゃって)
心の中でフンと
(いきなり自宅を招くとは、なんてハレンチな奴なんだ)
私は恐らくアイツの部屋であろう二階に向かって、舌を出して軽蔑すると、早くこの場から立ち去りたい衝動に駆られて、そそくさと我が家に帰った。
今日は宿題もはかどらなかったし、ご飯も残した。風呂にも入らずにただボゥと天井を見上げて、昼休みから下校までの出来事を何度も思い返していた。
アイツがあの子と一緒にいた時、すごい楽しそうだった。笑っている姿なんて、はじめてみた。
心の底で何かが込み上がろうとしていたが、その原因は分からず、とにかくムシャクシャした気持ちになった。それを発散すべく、近くにあったクマのぬいぐるみを取って棚に投げた。
すると、飾られていた箱に命中しクマと共に落下した。箱は落ちた拍子にパカッと開き、中身が散在した。
片付けなければならない
中身は1満点を取ったテストの答案や母からの手紙といった思い出の品が多く、一枚一枚手にとってまとめていると、ある一枚に目が入った。
(これは……便箋?)
手紙らしき内容が書かれていたので、読んでみる事にした。
たけだ じゅんくんへ
ほうかご、たいいくかんうらにきてください
めるまより
この三文だけだった。全部ひらがなと考えると、小学校低学年の頃だろうか。
でも、なんで宛名が『たけだ じゅん』、アイツの名前なのだろう。それにこの文章はまるで──と考えていた時、私の頭の中である記憶がフラッシュバックされた。
それを繰り返せば繰り返すほど、ますます確信してきた。
(わかった。なぜあいつが嫌いなのか)
私はすぐに書くものがないか探し始めた。そして、椅子に座り、熱心に鉛筆で書き始めるのだった。
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