君に縛られた僕
谷村ともえ
再会
僕にはもう一人の幼馴染がいた。中学に上がった時に、彼は引っ越してしまったけど。
相田シオン。いつも僕たちにくっ付いて来た一歳年下の子だ。あっち行けと言っても付いてきて、なんやかんや自分の弟のように可愛がっていた。アオイはそのことにちょっと嫉妬してたみたいだけど。
時が経って、僕は高校二年生になった。相変わらず地元に残って普通の高校に進学した。部活には入らないで、ゆっくりと中身のない青春を送っている。
そんな二年になった春。桜舞い散る四月第二週,
知らない女子生徒から声を掛けられた。
「あの!田辺タクミさん...ですよね?」
「そうだけど...」
「私です!相田シオンです!」
信じられなかった。言われてみれば面影はある。ショートカットで小動物みたいなかわいい顔。胸には一年の学年章が付いている。
「あぁ、シオン!久しぶりだな!」
「はい!田辺先輩もお元気そうで」
懐かしさとともに違和感を感じる。たしか、シオンは男だったはずでは?なのにスカート...。体型もスポーツマンのように細い。
「ちょっと待て。お前...男じゃなかったの?」
「何言ってるんですか。私は最初から女ですよ?」
そんな馬鹿な。小学生の時、川で遊んで何度も裸を見た気がするが...。
無い。胸もそんなに大きくないし、そもそも下半身を見た覚えが。恐らく当時の僕には性別なんて関係ないし、そういう事も気にしなかったのだろう。
「それより先輩!この後ご飯食べに行きません?」
キラキラとした目を僕に向けてくる。久しぶりの再会で、僕も彼女と話したかった。
「あぁ、いいよ」
「じゃあ、いつも行ってた喫茶店で待ってます!」
行ってしまった。小さいころからあんまり変わってない気がする彼女に安心する。しかし、同時に物足りなさを感じた。彼女に対する物足りなさでは無い。
アオイ。
中二の夏。縁側で見た彼女の笑顔が忘れられない。思い出すと、胸が苦しくなる。あの日以来、僕の前から彼女は姿を消した。やっぱり幻覚だったのか、それとも成仏したのか。僕には分からなかった。手に付いた桜の花びらを見ながら呟いた。
「お前ともっと見たかったな。桜」
さっきまでシオンと再会して浮かれていた心は、すっかりしぼんでしまった。とにかく喫茶店に行こう、彼女が待っている。
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