#31 執着心の芽生え
肉食系と言っても良いほどセックスに積極的な姿勢を見せているアイナさんだが、男性経験は一人だけ。
10代最後の時期に初めての彼氏が出来たそうだが、その男性にバージンを捧げた後、その男性は本性を隠さない様になり、結局アイナさんの方から愛想を尽かせて直ぐに別れたそうだ。セックスの経験も、実はその男と片手で数えるほどだと言う。
彼女の様な誰もが羨む様な美人と付き合うまでは必死に尽くしていたとしても、そのアイナさんを見事モノにしてバージンまで頂いたとなれば、その男もチョーシに乗ってしまったのだろう。アイナさんの方も、初めての彼氏ということで浮かれてしまい色々貢いだらしく、そういったことも重なり、彼氏は我儘放題言う様になり、優しさの欠片も見せなくなったことで、アイナさんも直ぐに目が覚めて別れたらしい。
それから約9年。
「初めての男で失敗したから、物凄く慎重になってたわ。 絶対に妥協はするつもりは無かったの。お見合いも嫌だった。でもずっと決めてたの。『この人だ』って思える人が現れたら、絶対に逃さないって。それでワタル君が私の前に現れて、今年大きなチャンスが巡って来たと思ったのよ」
という話を、俺との初めてのセックスの前に、話してくれた。
先日もその辺りの話は軽く聞いていたが、具体的で生々しいところまでは聞いていなかった。
更にアイナさんが言うには、処女では無いが中途半端な経験しか無いまま男性との交際から遠ざかった為、経験を重ねられないまま性欲と興味だけは深まり、ネットの海を彷徨う中で様々な性癖を知り、そして妄想を繰り返しては自分の性癖が開発され、今の様な頭でっかちなセカンドバージンが出来上がったそうだ。
自分でセカンドバージンと言っている訳ではないけど、そういうことだろう。
まぁ、女性に限らず、男性でも良くある話だと思う。
* * *
俺との初めてのセックスに関して言えば、彼女の反応は初々しかった。
「今夜は寝かせないわよ」とか言ってたのに、可愛いらしいものだった。
アイナさんには性技と呼べるような物は無く、終始俺がリードした。
それに、あれだけ俺の匂いに拘っていたのに、途中からそんなことなど気にしてる余裕も無さそうだった。 俺も彼女に沢山良い思いをして欲しいという気持ちが強くあったので、滅茶苦茶頑張ったせいではあるけど。
俺だって久しぶりのセックスだったし、この美貌と極上のスタイルを持ち、俺にトロトロに甘えて来る彼女を前にして、鼻血が出そうなほど気持ちが高ぶった。 それと、セカンドバージンで経験も乏しいアイナさんを充分に満足させることが出来たことは、男としての達成感もこの上なかった。
そしてその俺との初めてのセックスは、元々性に積極的で興味も強く持っていたアイナさんの本来の性欲を呼び覚ました様で、彼女は覚醒を果した。
つまり、この四日間、寝ても覚めてもセックス三昧。二人で爛れた生活を楽しんだ。
もう無茶苦茶だった。
こんな性生活、ナツキと同棲してた時でもしたことは無かった。
二日目には二人ともTシャツだけ着てパンツも履かずにお手洗いに行ったり食事などもする様になり、三日目には食事すら忘れてしまう程で、最後の方には、俺も彼女も避妊具を付ける間も惜しむ様に求め合った。
後で冷静になってから流石に避妊無しに関して反省して、いくら外に出す様にしていたとは言え、彼女に謝罪し彼女にも気を付ける様に重ねて注意したが。
兎に角、この四日間、俺たちはお互いを激しく求め合い、お互いの体の隅から隅まで舐め合い、相手が望むことなら何でも応え、羞恥心を捨て去り遠慮なく様々なプレイを相手に要求し、最中はお互いを『君』も『さん』も付けずに名前で呼び合い、本能の赴くままにお互いの体を貪った。
特に彼女の方は、積極的に様々なことに挑戦し、この四日間で稚拙だった性技もどんどん上達させて、俺を喜ばせるだけでなく本人も楽しむことが出来る余裕さえ持てるレベルになっていた。
それなりに女性経験のある俺でもこれだけ濃密な性体験は初めてのことで、よく言う『セックスの相性』という物を今まで明確に感じたことが無かったが、彼女とのセックスで、初めてセックスの相性の良さを体感した。
もう、ここまで来ると、俺にとって『山名アイナ』という女性は理想の女性、そのものだった。
端正で目を惹くほどの美貌に、毎日手入れの行き届いた艶々でサラサラの黒髪。
普段からキリリとした表情は、何度もドキっとさせられた。
たまに見せる泣きそうな表情や不安そうな表情だって、ギャップがあって愛らしい。
身長は女性にしては高い方で、俺との差は5センチ程だろうか。
脚は間違いなく俺よりも長く、モデル顔負けのスタイル。
バストは大き過ぎず小さくも無く、身長に対して丁度良いバランスのお椀型で張りのある美乳だ。
プリプリと形の整ったお尻にただ細いだけじゃないキュッと締まってスラリと伸びた美脚だって、仕事中でも気になって無意識に目で追ってしまう程である。
脱いだら脱いだで全身ムダ毛が全くなく剥いた茹で卵の様につるんつるんのぶにぶにで、肌触りも揉み心地も最高だ。
性格は、クセはあるが俺とはとても気が合う。
公私ともにお互い本音を言い合え、時には喧嘩にもなるけど、相手を思いやる気遣いが常に感じられた。
普段のお喋りは、いつも次から次へと話題が目まぐるしく、そして面白い。
俺が軽く揶揄ったりしても、一々その反応が笑わせてくれる。
そして、セックスの相性の良さも身を持って知った。
ここまで自分にとって理想的な女性は、アイナさん以外ではもう出会うことは無いだろう。
これまで自分の中では、「こんなにも俺に好意を向けてくれる彼女に、応えなくては」という義務感みたいな物が心のどこかにあったと思う。
しかし、彼女とのセックスの相性の良さを知ったことで「この人を絶対に手放したくない」という執着が自分の中に芽生えた。 これはナツキに対しては無かった感情だ。
この時芽生えた執着心が、俺にとって呪いとなることを、俺はまだ解っていなかった。
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