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この危機をなんとかしたいけど、僕の力ではどうにもならない。
それならタックさんの意思を尊重して、僕だけでもこの場から逃げ出さないと。それが彼の想いであり、鎧の騎士の注意が僕から離れている間しかこの場を離れられるチャンスはない。
…………。
……。
ッ! 僕は何を考えているんだッ! このままタックさんを見捨てて逃げられるわけがないじゃないか! 弱気になってどうする!?
僕はここへ辿り着くまで、たくさんの人に支えられてきた。村長様やトンモロ村のみんな、ブラックドラゴン、シアの街の人々、レインさん、動植物やモンスターたち、そしてミューリエやタックさん。そのほかの数え切れない存在――。
こんなヘタレな僕を信じて、期待して、背中を押してくれた!
僕は勇者だッ――なんて胸を張って言える立場ではないし、その力もまだないけど、勇者の末裔としての誇りはある! 最後の最後まで諦めちゃいけないんだ!
タックさんひとり守れずに、何が勇者だ? それさえ出来ずに世界を救えるわけがない。
僕には意思疎通の力がある。唯一にして最大の武器。今、鎧の騎士がタックさんの制御下から外れたなら、僕の力は直接通用するはず――。
だから命を賭けてでも絶対に鎧の騎士を止めてみせるッ!
僕はタックさんを庇うような位置へ立ち、大きく深呼吸した。そして迫り来る鎧の騎士をチラリと見つめてから、目を瞑って想いを念じようとする。
でもその時――っ!
「何をしてるんだ! 早くオイラを見捨てて逃げろ!」
間近からタックさんの叫び声が上がり、思わず僕は目を開けて彼の方を見た。彼は僕がいつまでもその場から離れないことに苛立っているようだ。
いつもの僕だったら心が揺らいでしまったことだろう。でも今の僕には確固たる信念がある。絶対に退くわけにはいかない。
「そんなこと僕には出来ません! それなら……逃げるなら一緒に!」
僕はタックさんを真っ直ぐ見つめ、強く言い放った。
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https://kakuyomu.jp/works/16817139556074419647/episodes/16817139556075206504
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