第86話
それから瞬く間に約四年の月日が流れる。
長いようでいて、流れ星の瞬きのように一瞬で日々は過ぎ去った。
アデレードはサノワ学園に入学し、ローランとの仲は学園入学前と比べてさらに進展した。
アデレードは学生の本業である学業に励みつつも、放課後にローランと学園内の図書館で隣同士で座って一緒に勉強したり、昼休憩の時間は学園内のカフェテリアで一緒にランチをしたり、週末には一緒に王都で遊びに行ったりと青春を謳歌した。
時にはローランの友人とその婚約者と一緒にグループで交流したり、学園で出来た女友達と一緒に遊んだりもした。
物理的な距離というものは大切で、お互いに中々会えない環境にいるよりも、毎日のように顔を合わせて交流する距離にいた方が人となりを知る機会は多くなる。
勿論良いことばかりではなく、些細なことが原因で喧嘩もしたが、今となっては良い思い出だ。
それだけにローランが一足先に学園を卒業してしまった時は、アデレードはこれからは中々会えなくなるので寂しくなったが、”アデレードが学園を卒業したら、結婚しよう”とローランが満天の星空の下でプロポーズしたのでそれを励みに頑張った。
プロポーズの場所は、アデレードが入学試験の為に王都に訪れていた時にローランと一緒に行った丘だ。
二人の関係が婚約者に変わったあの思い出の場所である。
丘は地形的に市街地よりも空に近く、街灯等の人工的な明かりもない丘は、空が雲で覆われてさえいなければ、それはそれは見事な星空を楽しめる。
そして、つい先日、アデレードは沢山の思い出と共に晴れて学園を卒業した。
学園は卒業式典と共に卒業パーティーというものも主催している。
卒業式典は卒業する生徒達とそれを見送る学園の講師達しか参加は不可だが、卒業パーティーは卒業する生徒の家族や婚約者も参加が許可されている。
ローランは当然のように駆けつけ、アデレードとダンスを踊った。
その時のアデレードはローランから卒業記念ということで贈られたドレスやアクセサリーを着用して参加していたが、ローランの独占欲が丸わかりで、会場の皆から注目を集める。
青紫色を基調としたプリンセスラインのドレスで、金色の生地で小さめの薔薇をいくつも作り、胸元やドレスのスカート部分を彩ったデザインだ。
ローランは薄いグレイのタキシードを着ていたが、アデレードが誕生日祝いに贈ったネクタイピンとカフスボタンも小物としてさり気なく身に着けていた。
息ぴったりのダンスを踊る美男美女でお似合いの二人は沢山の人に祝福された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。