第339話 ソフィアとの時間 2
エターレインにあるダンジョン、通称『不思議なダンジョン』についたクリフとソフィアは、受付に向かった。朝早くというのにそこには大勢の順番待ちの行列ができていた。
「めっちゃ並んでるな。」
「いつもこんな感じだよ。持ち込むアイテム以外は何も準備しなくてもいいから楽だよね~。」
「そういやソフィア?何も準備しなくてもいいって言っても武器とか防具は持って行った方がいいんじゃないのか?それこそ帰還の魔法書を持って行くならなくなる心配もないだろ?」
「それはそうなんだけど、このダンジョンって地下1階と地下2階に武器と防具が落ちてるんだよね。武器を拾って装備して、良い武器があれば交換してってなんか面白いしそれもダンジョンの醍醐味かなって。」
「なるほど。たしかにそうだな。強い武器や防具を持ち込んだら楽しさ半減って事だな。なんだ、ソフィアもけっこうチャレンジャーなんだな。」
「冒険者ってだれもが憧れるでしょ?私はセリーヌやユーナみたいにお姫様じゃないしね。」
クリフとソフィアは順番を待ちながらダンジョンについて話していた。すると、
「ソフィアちゃん。今日は男とダンジョンかい?」
「ゴランさん、おはようございます。ゴランさんもダンジョンですか?男ってクリフ君はこの街の領主ですよ?」
「領主・・・様?っていうとソフィアちゃんの旦那の?」
「はじめましてクリフ・エターレインです。ソフィアがいつもお世話になっています。」
「お、おう。あっ、いえ。すいません。ゴランです。え~っと。」
「そんなかしこまらなくていいですよ。今日は俺もソフィアも冒険者として来てますし、いつも通り話してくれて。」
「そ、そうか・・・ならそうさせてもらうか。」
「ふふ。ゴランさんでも緊張するんですね?」
「そりゃ、ここの領主様だろ?色々と噂は聞いてるからな。不敬なんて働いたら一瞬で黒スミになっちまう。」
「クリフ君。こちらのゴランさんは、B級の冒険者で不思議なダンジョンの常連なんですよ。貴重なアイテムなんかを何度も持ってきてもらってるんです。」
「へぇ~。そうなんですか。ちなみに地下何階まで行ってるんですか?」
「俺達不死鳥の剣は地下60階までだな。頑張ればそれ以上もいけるんだろうけど、さすがに死んだら持ってるモノを全部失っちまうからな。安全に行ってる感じだ。」
「すごいですね。でもこのダンジョンばかりだと、実際のレベルとかが上がらないんじゃないですか?」
「その辺はうまくやってるさ。ここでは金と経験が積める。他のダンジョンじゃできない事がここではできるし、武器や防具なんかも運が良ければかなり良いモノを手に入れる事ができるから、全然損はないぜ。」
(なるほど。ソフィアの話では武器や防具は地下1階や地下2階で手に入る。まあそこで手に入る武器がそれ程強いとは思えないけど、駆け出しなら買わなくても武器防具が手に入るのはかなりありがたいはずだ。それに地下60階ともなるとかなり強い武器も期待できる。ここで装備を整えれば、他のダンジョンでの生存確率もグッと上がるだろう。新人からベテランまで多くの人が利用する理由がわかってきたな。)
「私達は今回レベルアップの実狙いだよ。クリフ君はこのダンジョンを攻略した事があるからゴランさんの地下60階より深く行けるかもね。」
「なっ!?まじか・・・さすが領主様。だけどここじゃ運の要素もかなり必要だ。ソフィアちゃんも気を付けなよ。」
「ありがとね。ゴランさんもね。」
「ああ。」
そう言ってゴラン率いる不死鳥の剣はダンジョンへと入って行った。
「さあ私達も行きましょ。」
「ああ。」
ダンジョンに入ると、宙に浮いた妖精が現れた。
「これは?」
「案内係だよ。クリフ君は見た事ないの?」
「ああ。初めて見た。」
(こんな感じになってるんだな。キューブ様もけっこう力入れてる感じだな。)
「なら、説明を受けていく?私ももうわかってるからいつも説明を省いてるけど。」
「そうだな。俺の知ってるルールと違ってるかもしれないから一通り聞いてみたいな。」
「いらっしゃいませ。エターレイン不思議なダンジョンへようこそ。初めての方はダンジョンの内容を説明します。聞きますか?」
「はい。お願いします。」
「わっかりました~。当ダンジョンは、とっても不思議なダンジョンとなっております。どこが不思議かと言いますと、まず死んでも入口に戻されるだけです。なので安心してダンジョン攻略を楽しんでください。次に、入った瞬間どんな人もレベル1からのスタートとなります。ダンジョンに出てくる魔物を倒して、ドロップするアイテムや、ダンジョン内に落ちているアイテムを拾って先に進んでください。最下層は地下100階になっています。注意点として、死んでも入口に戻されるだけですが、持っているアイテムは全てなくなってしまいますので気を付けてください。そして、最後がダンジョン内では時間の流れが異なっています。具体的には地下20階までなら、死ぬか帰還するときっちり8時間経過しています。21階から40階までなら1日と8時間経過という感じです。他には・・・」
(なるほど。ここまではだいたい俺の知っている部分と同じだな。変更点はあまりない感じだな。職業選択は俺が提案したヤツだな。ソフィアとの時間は7日間その間にどこまで行けるか・・・楽しみだな。)
妖精の説明を一通り聞いたクリフとソフィアは、職業をクリフが戦士、ソフィアが魔法使いを選んで、ダンジョンへの挑戦を開始したのだった。
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