海の中へ

aki

第1話

(今、深い海の底へ愛する人と

手をつなぎ、しずんでいる。)


職場の人達と、昼食を一緒に

していた。

その時の話題が

[ねぇ、もし生まれ変われるなら

何歳に戻りたい?]

[う~ん、私は中学生かな?楽し

かったから!]

[私は小学生!もっと勉強してたら

良かった!]

と、みんな様々だった。

(私、森下花、30歳)

[ねぇ、花ちゃんは?]

[私は、5年前ですかね?]

[5年前?ちょっと昔じゃん!

どうして?]

[いや、別にフト思っただけ!]

と言って、ごまかした。


そう5年前、花は大好きな人と

無理心中を計ったのだった。

[花、生まれ変わったら

一緒に、なろう!]

[章一さん私を見つけてね!]

そう言って手首をロープで縛って

手を繋いで海へ飛び込んだ。

だが、遠くから釣り人が見ていて

通報されて今生きているのだった。

病院に搬送される2人。

数日で意識が戻る。

(死ねなかったんだ!)

泣く花。

看護士さんが、やって来た。

救急車で運ばれたので、みんな

事情は知っている。

[看護士さん、一緒に搬送された

人は?]

[その方も意識戻りましたよ!]

(1人じゃ無い、でも死ねなかったから

もう会えないな!)


花は短大を卒業して大手チェーン店に

就職して働いていた。

その時、花は20歳だった。

そして、その店で彼と出会って

しまった。

何度か、お店に来た事が有った人

だったので顔は覚えていた。

そんな、ある日、通路で商品の

組み立て作業をしていたら

[女性なのに、こんな事もするの?]

と聞いて来た。

[はい、仕事ですから。]

[無理しないでね、じゃ!]

と言って帰って行った。

結構、お客さんに声を掛けられる

ので、さほど気にしていない花

だった。

そして数日後、又彼がやって来た。

その日も私は売り場で違う作業を

していた。

[森下さん今少し時間いい?]

[えっ!名前!]

[名札、名札に書いてるよ!]

[あっ、そうですね!それで

何でしょうか?]

[森下さんのシフトちょうだい?]

[私のですか?でも、みんなのも

載ってるんで。]

[森下さんの所だけ切り取って

ちょうだい?そしたら森下さんが

居る日に買い物来るから!]

そう言って帰って行った。

(来てどうするんだろう?)

それから毎日、彼はシフト表を

貰いに来た。

[出来た?]

[まだです。]

それを繰り返して、いると

[本当に、ちょうだい!]

[本当に言ってるんですか?]

[うん。]

[わかりました、事務所に有るんで

取って来ます。]

そして、シフト表を渡した。

[ここに、携帯の番号書いて!]

何故か私は言われるまま書いて

しまった。

仕事の帰りに携帯が鳴った。

メッセージが入ってた。

(あっ、あの人だ。)

メッセージには

(お疲れ様。)

(ありがとうございます。)

と返事を送った。

何故か心が弾んでいる自分に

気が付き

(あの人何歳だろう?私より

だいぶ上だよね、じゃあ、もう

結婚してるよね!)

と言い聞かせた。

そして私が勤務の時は必ずお店に

やって来た。

[1度さぁ、ご飯食べに行こうよ!]

[でも...]

[ご飯位なら、いいだろう?]

[そうですね。]

[じゃあ次の森下さんの休みに

行こうよ!]

[はい。]

[じゃあ、その日11時に、この店の

駐車場で待ってるから!]

[はい。]

と待ち合わせを、した。

[すみません、お待たせして!]

[いや、俺も今、来た所だから!

さぁ、乗って!]

そして少し走ると、おしゃれな

カフェが、有った。

[ここで、いい?]

[はい。]

と、その店に入った。

[好きなもの頼んでいいよ!]

[じゃあ、私はランチで。]

[じゃあ、僕もランチで。]

そして彼は

[俺、山村章一、39歳です。]

[私は森下花、20歳です。]

[かぁー若いな~]

[あの山村さん39歳って事は

結婚してますよね?]

[一応してる、でも、もう冷めてるからね

形だけだよ、あの流行った仮面夫婦。

花ちゃんは彼氏は?]

[居ないです。]

[花ちゃんは可愛いいから、モテる

だろう?]

[全然モテませんよ!]

[気付いて無いだけだよ!]

そしてランチが来た。

[いただきます。]

[美味しい~]

[本当、なかなか、いけるね!]

[山村さん、よく買い物来ますけど

仕事してるんですか?]

[ハハハ、参ったな~俺、無職だと

思われてたの?]

[いえ、そういう訳では。]

[設計事務所、経営してるんだ、

忙しい時は徹夜とか有るけど普段は

スタッフも居るから結構、外に

出れるんだ。]

[そうだったんですか?でも、

図面描いたり大変なんでしょう?]

[慣れたら仕事はみんな一緒だよ!

花ちゃんだって、あんな大きな物

組み立てたり大変でしょう?]

[そうですね、まだ慣れなくて!]

食事が終わると

[コーヒー飲む?花ちゃんは

パフェとかの方がいいかな?]

[コーヒーで、大丈夫です!]

(子供、扱いして~)

そしてコーヒーを飲みながら

話をした。

[これからも、こうやって食事

したり、デートしよう!]

[デートですか?]

[花ちゃん結婚してる俺だけど

付き合ってください。]

[ちょっと待って下さい、直ぐには。]

[分かった、じゃあ考えといて!又

ラインでも、いいから返事ちょうだい!]

[はい。]

そして、その日は、それで別れた。

[花ちゃん楽しかったよ!]

[ありがとうございます。]

[じゃあ!]

花は、ドキドキしていた。

(不倫だよね?いくら冷めていても

不倫に変わりは無いよね?)

返事が送れない花。

数日後、山村が店に買い物に来た。

[花ちゃん返事は?]

[あの~不倫ですよね?不倫は

良くないかな?って]

[もう決めてるんだよ、俺!今

花ちゃんが好きなんだよ!真面目な

所、そして、その笑顔が大好き

なんだよ!もし付き合って嫌なら

別れてもいいから!それでも

いいから!]

山村の猛アプローチに花は

[はい。]

と答えてしまった。

ここから花と山村の人生の

歯車が大きく変わるのだった。


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