第50話 巡る月日


 青都へ戻り時が流れ、四年後。


 離れの暮らしは、穏やかに続いていた。


 その間、何度か魔物の討伐依頼があったようだけど、御当主様とツクヨミで対処したらしい。


 曖昧な言い方なのは、全て侍従頭に聞いたものだから。


 討伐に際し、陸奥へ赴いた時のようにスサノオへ声は掛からなかった。


 あたしとしては、スサノオが危険な目に遭わないに越したことはない。


 でも、スサノオがどう思うかは別。


 ツクヨミは同行しているのだから、尚更。


 それを聞きしばらくスサノオを観察していたのだけど、気にした様子もなく。


 いつもと変わらな過ぎて、逆に不安を覚えた程だ。


 けど言動から本当に何とも思っていないと察せられ、以後あたしも気にするのを止めた。


 そんな中、スサノオはある日思い掛けぬことを口にした。


 刀術の鍛錬とは別に、言葉を習いたいと。


 あたしが寝物語をする際、興味を持ったらしい。


 学はあって損はない。


 それをあたしは、身を以て学んでいる。


 ただ上手く教えられるかというと、自信がなかった。


 それに学ぶなら、読み書きと一緒に習った方が良い。


 侍従頭に相談した結果、先生を手配してくれることに。


 希望が通ったことを伝え、先生が来る日をスサノオと一緒に楽しみに待っていると、やって来たのは座敷童ざしきわらしのメイだった。


「……」


「…………」


 言葉もない、スサノオとあたし。


「せっかく教えに来たわらしに、失礼じゃねえですこと!?」


 両手を振り上げ、怒りを露にするメイ。


 変わらぬ言動が、物凄く心配……。


 しかし先生として振る舞い始めると、口調になっていた。


 加えてその教え方は分かり易く丁寧。


 おかげで、拙さの目立つスサノオの言葉遣いは格段に良くなった。


 より言葉を知ることで、話しをするスサノオの声が心なし弾んでいるように感じる。


 そのことが、何より嬉しい。


 ただ、あたしは密かに思った。


 メイの口調は、やはり作っていたのではないかと……。

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