【破章】第2話 口減らし
天高く、細い雲が幾筋もたなびく、秋の半ば。
既に寒いと感じる山中を、あたしは朝から晩まで歩き回っていた。
赤や黄の落ち葉に、葉を落とさぬ樹の緑、空の青。
色彩豊かな秋の山は、ぼうっと見ているだけでも飽きないが、そんなことに
獣は実りの秋に蓄え、冬へ備える。
それはあたし達も同じだ。
そしてこの時期のあたしの仕事は、山で木の実を拾い、仕掛けた罠を見回ること。
しかも、一定の量を持ち帰えれと言われている。
できなければ、良くて飯抜き。
悪いと
ちなみに、この罰はあたしだけだ。
兄や姉に科されたことはない。
兄は妖力で体を強くできる、赤鬼。
姉は妖力を用いた術を放てる、青鬼
一方のあたしは、妖力を持たない白鬼。
白は各種族で稀に生まれる妖力を持たない者で、
「この分だと、ぎりぎりかな……」
背負い籠の重さが、心許ない。
ここ数年、山の恵みが減っている。
里では忌子がいるせいだと、声を潜めることなく言われるけど、あたしにそんな力があればとっくに恵みを消している。
日頃から満足に食わせてもらっていないあたしは、真っ先に死ぬだろう。
でも、死なば
少なからず里の者を道連れにできると思えば、本望とすら言える。
そんな良くないことを考えたせいだろうか。
疲れた足を引き摺り家に帰ると、父親からこう告げられた。
「お前を売って冬の備えを補う」
その言葉に、心に浮かんだのは怒りや悲しみじゃなく。
こんな時ですら名前を呼んではくれないのかという、ただその想いだけだった……。
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