第4話 婚約破棄と新たなる婚約
魔王討伐が始まった。
いくぞおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!
うおおおおおおおおおおおおおお!!!
村長の号令で最果ての村の男衆達が魔王軍へと続く道を切り開いていく。
同時に女性の村民は後衛に回り回復支援や攻撃魔法による援護攻撃を行った。
突然の攻撃は奇襲攻撃となり、魔王城近辺の魔王軍は困惑していた。
「さあ、突っ切りますよお嬢様!」
「ええ!」
クロードがリナに合図を送る。
ユークリッドから溢れる勇気にあてられてか、恐怖を微塵も感じることなく敵陣へ突撃するリナ。
公爵令嬢とは思えない剣さばきで、立ち塞がる敵を切り伏せてはその足を前へと進めた。
そしてついに魔王城の中の最深部へとたどり着いたのだ。
「人間の小娘に小僧か……我も舐められたも―」
「うるさい!」
「ぐほぉっ!?」
魔王らしき人物がユークリッドの一太刀で両断される。
「お、お嬢様!?」
あまりの突然の出来事に狼狽えるクロード。
魔王は倒れた。
しかし物語のクライマックスはこれからである。
「さっき伝令が来たのよ!」
伝令の内容はこうだ。
“エスタリア・テスタロッサ公爵令嬢、ルーカス・ガルバディア王子と婚約決定す、結婚式近日決行”
「急げばまだ間に合うわ!馬を貸しなさい!」
リナは伝令を引きずり落とすと馬に乗った。
乗馬も慣れたもので淑女のたしなみである。
「あなたも来るのよ!クロード!」
「えぇええええ!?」
クロードは引き寄せられると馬の後部に乗せられた。
本来ならクロードがエスコートすべきなのだが、完全に勢いに乗せられている。
ヒヒーン!
「はいよー、シルバー!!!」
馬は二人を乗せると、元婚約者と妹令嬢の待つお城へと向かった。
―ガルバディア城-特設結婚式場-
「そのドレスよく似合ってますよエスタ姫」
「ありがとうございます、ルーカス王子」
二人は相思相愛と言った感じで互いに頬を染め視線を逸らしている。
そして結婚式は始まり、二人が口づけしようとするその瞬間であった。
「その結婚式、ちょっとまったああああああああああああ!!!」
会場に乗り込んだのはリナ、とその後ろに申し訳なさそうに立っているクロードだった。
「リ、リナ……!」
「お姉様!」
二人はあたふたと弁明しようとするが言葉が出てこない。
「よもや妹に寝取られをかまされるとはね……完全に油断してたわ!」
「リナ、違うんだ!これは僕から誘って―」
「黙らっしゃい!そんな事はどうでもいいのよ!」
「え?」
きょとんとするエスタとルーカス。
「男から婚約破棄なんてされたら私に傷が付くでしょ!即刻破棄してあげるから再婚約しなさい!」
「ええと、私ことルーカス・ガルバディアはリーナ・テスタロッサと再婚約します……これで?」
「よし!その婚約は破棄よ!後は好きになさい!」
そしてリナはクロードの手を取る。
「私ことリーナ・テスタロッサは、この魔王を倒した勇者クロードと婚約します!」
がやがやがやがや
騒めく招かれた客人達。
そして訳も分からず動揺するクロード。
「お嬢様、これはいったい―」
「なによ、私じゃ……嫌なの?」
涙ぐんで上目遣いで見つめるリナ。
ごくりと息を呑むクロード。
そしてリナが目をつぶると、クロードがキスをした。
再び湧き上がる客人達。
「わ、ワシは許さんぞ!そんな平民の小僧に大事な娘を―」
「その大事な娘を魔王討伐に送り込んだのはどこの誰だったかしら?」
父親の公爵を睨みつけるリナ。
「お姉様おめでとうございます!」
「おめでとう、リナ!」
祝福するエスタとルーカスの拍手が会場に響き渡る。
そしてそれに続いてか客人達も拍手を次々とあげていく。
こうして公爵令嬢は無事婚約しましたとさ。
めでたし、めでたし
「めでたくなああああいいいい!!!」
ただ一人、拍手に埋もれず豪声を上げる父親の公爵であった
-完-
公爵令嬢、伝説の剣を抜いてしまったが為勇者となり婚約破棄される~速攻で魔王倒して再婚約するから婚約しないで待っててね!!~ 勇者れべる1 @yuushaaaaa
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