#15 よろしく
いつもの授業は、ヴァーチャルの先生と俺とミリで行われる。
先生が説明して、俺が学ぶ。
先生が問いを出して、俺が答える。
たまにミリが口を挟んで、俺の理解が足りないところを補足する。
とても、順調で……純然な授業だ。
ユウキたちとの授業はまるで別物だった。
先生は同じくヴァーチャルだった。
だが、説明の最中からオオヌキが喋る。ハカマダも喋る。ユウキも喋る。
喋る内容によっては、先生も彼らの話に対応して喋る。
そしてまたオオヌキが喋る。オオヌキがさらに喋る。オオヌキがもっと喋る!
オオヌキイイイイいいいっっっ!!!!
授業内容をしっかり把握して、集中していないと、何しにここにいるのか見失うくらいだった。
こんな状況で勉強するなんて常軌を逸してる。
俺は先生を含めた授業の流れが脱線する度に、タブレットを見返して必死に頭に叩き込んだ。
先生も全部スルーすれば良いのに。
なぜ説明を中断してまで時折会話に加わってくるのだろう。
60分間の授業が終わった時、俺は正直かなりのストレスを感じていた。
この後、15分の休憩を挟んで二時限、三時限と続き、1時間の昼食時間になる。
ユウキが二時限目と三時限目を俺と同じ合同授業に変えたから、今日は
授業チャイムが鳴るやいなや、タブレットを鞄にしまいながらユウキが立ち上がった。
「タドコロぉ、次の授業も良い席取りたいから早く行こう。今日は気を遣わせて悪かったな、オオヌキ、ハカマダ、また今度ゆっくり話そうな!」
「おう、またなー」
「シーユースーンゴ」
「ごめんっ分からん。 ツッコミも今度な!」
俺は慌てて荷物を持つと、クラスメイト二人に見送られているユウキの後を追う。
あ……結局一言も……
なんとなく後ろ髪をひかれながら席を離れかけた俺をハカマダの声が呼び止めた。
「タドコロさんも、またね」
振り向くとハカマダが笑顔で手を振っていた。
う゛あ……
なにかが胸の辺りからこみ上げてきたように感じる。
「また近いうちにお会いしましょう」
隣のオオヌキが真顔のままそう言った。俺にだ。
目がまっすぐ俺を見てる。
「うん……。あの、俺……よろしくっっ。また……っっ」
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