#5 事故
「ビー、ビー、ビー、ビー」
サイレンを鳴らしたパトロールドローンが現れる。
「現場で確認される当事者、横転車両一台、及び男性一名。現場写真6枚を送信します。横転車両の車両ID確認、#HB52 F852 1966、搭乗者一名確認、生存反応レベル8、緊急性なし、管理会社への連絡をお願いします」
ヒュイイーンッ
大型輸送車の周囲を飛んでいたドローンが、俺の前に降下してきた。
「大宮警察署です。怪我はありませんか?」
「俺は全然、草の上に倒れたくらいなんで。車の方、人が乗ってたんですか? 大丈夫なんですか?」
「ハイブリッドタイプで一名搭乗していました。簡易スキャンですが、身体に異常は認められません。詳細は後日報告書を送ります。事故当事者でよろしいですか?」
「はい、タドコロ トオルといいます。あんまり周り見てなくて……気づいたらあの輸送車が俺の方に突っ込んで来てて、ミリが俺を突き飛ばして輸送車にぶつかって……」
「第二当事者側の目撃証言により緊急回避措置による接触横転事故の可能性、カメラ映像を確認してください。タドコロ トオルさん、念のため、簡易スキャンを実施してよろしいですか?」
「はい、お願いします」
「ID 81M0 7832 7064 1000、タドコロ トオル、生存反応レベル10、負傷なし 。交通状況問題なし、現場離脱します」
「あのっっ、……ミリが……」
上昇しかかったドローンが、俺の手元へとゆっくり降りてきた。
なめらかな道路の上、力なく下ろされた俺の手のすぐ先に、ひしゃげた物体があった。
土星みたいに環がついた、直径5cmほどの球体、だったもの。
歪んで、一部が欠損している。
「
ウィィーン、という機械音とともに、ドローンからバーコードの印刷されたカードが出てきた。
俺はカードを受け取る。
今日の日時と、大宮警察署のらしいマークも印字されていた。
「他にご質問はありますか? なければ、現場を離脱します」
「ありません……。ありがとうございました」
俺の返事を確認すると、すぐにドローンは上昇してどこかへ飛んでいった。
横転車両の中から声が聞こえる。
管理会社と連絡を取り始めたんだろう。
きっと、俺に気づいたら謝罪だなんだってまた長い話に巻き込まれそうだ。
カードとひしゃげたプロジェクターを胸ポケットに入れ、立ち上がる。
少しでも早く家に。
俺は全速力で走り出した。
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