あたいはスピちゃんー真っ黒仔猫の回復期日記ー

岩田へいきち

第1話 これまでのスピちゃん、12月15日、19日、22日

※※※※ これまでのスピちゃん ※※※※


2021.10.11  

 

 あたいは、軽トラのおっちゃんに跳ねられた。

あれは、ひき逃げだ。てか、おっちゃんは、全くあたいに気づいてない。それほどあたいは、軽くて、黒くて小さくて、世の中から簡単に弾き飛ばされ、消されようとしていた。

だけど、すぐ後ろを走っていたママが助けてくれたんだ。

今にも消えて無くなりそうなあたいを動物病院のおじいちゃん先生がなんとか命を救ってくれた。

しかし、重症でまったく動けない。ご飯もお水も飲めない状態で歩けるようになるかどうかもいつまで生きれるかも分からなかった。


 でもあたいは頑張った。天使があたいを助けてくれたのだ。そして、あたいは、ママとパパの家の子になった。真っ黒い猫だからブラックホールにちなんだ星、スピカと名付けられた。ママとパパの家には、どちらも保護猫のルーク兄ちゃん(9歳)



とアルク兄ちゃん(2歳)がいる。

あたいは、まだ感染症のウイルスをもってるかも知れないし、まだ小さくて検査も出来ないからお兄ちゃんたちとは離れたケージの中で暮らしてきた。

ご飯も自分で食べれるようになって、トイレも出来るようになって、跳ねられから2ヶ月、検査結果は陰性。ついにケージの外に出ることが出来た。夢にまで見ていたルーク兄ちゃんやアルク兄ちゃんと遊ぶということが実現できたのだ。まだまだ、ちゃんと歩くことは出来ない。リハビリのステージでいうとこれまでは、急性期。


※  急性期日記から読みたい方はこちらからお願いします。


https://kakuyomu.jp/works/16816700429467256698/episodes/16816700429468014437




 これからを回復期として、リハビリの様子やお兄ちゃんたちの様子。ママ、パパの様子の日記をつけていきます。あたいは字を読めないし、書けないけどね〜。右腕の圧迫骨折は、天使が触ってくれたお陰で繋がったからシャーペンや消しゴム使ってる。あちこちに隠すからママからよく怒られるけどね。作家は大変だ。



12月15日(水)

 あたいがまだよちよちとやっと歩いているから階段は登れても降りる時、危険だろうと二階に上がれない様にママが階段の上り口に柵をつけた。


ママごめん。柵越えちゃったし、二階まで登っちゃった。

腕の力はケージの中で鍛えてたからね。登るのは平気だったよ。

でも降りるのはちょっと怖かった。一段一段だけど、手をつく度に逆立ちみたいになって前にでんぐり返りそうになったけど下まで降りれたから柵要らないよ。

お疲れ様、ママ。

二階も解禁してね。二階には、物がごちゃごちゃあって、なんだか、面白そうだった。あれは、物置? お姉ちゃんの部屋なのか。あんなに物があったらお姉ちゃん帰って来れないわね。



12月19日(日)


 パパ、庭で、どこかのお兄さんと何かやってる。何やってるんだろう? もう、ケージに入っていなくていいからカーテンの裏から窓ガラス越しにお庭見えるんだもん。お庭けっこう広いんだね。お家は、そんなに大きくないけどね。まあ、このお家しか知らないから他の家とは比べられないけど。


 新しい物置建てるんだ。お兄さんと建てる場所を決めていたんだね。お姉ちゃんの部屋の荷物移すんだって。古い物置もあるけど錆びて穴があいたりしてきてるからそっちの方の物も処分するんだって。お兄さん、午前中だけで1人で建てちゃった、凄いね。古い方は、もう少し大きいけど、パパとパパのお父さんで建てたんだって。パパのお父さんももう死んじゃってるんだよね。ルーク兄ちゃんは、一回だけ、パパの実家に行った時、お父さん見たことあるけど、知らないところに連れて行かれて怖かったからほとんど見てないし覚えてないって。



12月22日(水)


なんかここ登れるなあ。カウンターまで登れた。ここにお水飲むところがあるんだよね。ママ、スピカひとりでも楽に登れるようになったもんね。


これなんだろう? 触ってみよう。動かないけど…… えい。

ガシャーン

えっ? 何? 何の音? あっ、さっきの白いの、落ちた。籠の中のなんか割れたみたい。コップかな、お皿かな? 

あ〜。ママごめんなさい。落としたマグカップがお皿割っちゃった。兄ちゃんたち、なんとかならないかな? ママに怒られる~。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る