人生は続くのだから
シヨゥ
第1話
「過度な無理で成長はできないんだ。出来るのは自滅だけ」
弟はそう言ってカップを置く。
「コーヒー。少しは落ち着くだろう」
「ありがとう」
少し離れた場所で椅子に座ると弟は机に頬杖をつく。
「姉ちゃんは自滅の手前に居るんだ。それを自覚して今はゆっくり休むことが大切だよ」
「でも今が頑張り時なんだよ」
「頑張って評価されて、その後が続かなかったら意味ないじゃない」
そう言ってため息をつく。
「これで終わるならそれでいい。でも姉ちゃんはこれからも生きるわけだろう? だったらその頑張りは間違っていると言わざるを得ないよ」
「それでも投げ出すわけには……」
「大丈夫。世の中はうまくできているもので姉ちゃんが抜けても誰かがその穴を埋める」
「それじゃ今までの努力はなんだったの」
「なにも無駄になるわけじゃない」
そう言うと弟は息を吸い、
「その努力を知り、評価している人がここにひとり居るというだけじゃダメかな?」
と問いかけてきた。
「あり、がとう」
なんと言ったらいいか分からず歯切れ悪くそう返すと弟は咳払いをする。
「とりあえず本調子に戻るまで休むこと。いいかい?」
「うん」
そう返すと弟は安心したのか深く息を吐いた。
「それじゃあ僕は席を外すよ。何かあれば連絡を」
そう言い残し弟は部屋を出ていく。
玄関で眩暈を覚えて座り込んだ姿を見られた時は慌てたけど結果的には良かったようだ。
久しぶりに弟と話せてすっきりした。そんな気がする。
人生は続くのだから シヨゥ @Shiyoxu
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