月の王子

コンロード

『神様』

 私が今までの人生で、たった一人だけ愛した彼……。


 彼だって、絶対、私を愛してくれていた……と思う。


 でも彼は「他に好きな女性ひとが出来た」と言って、この部屋から居なくなってしまった。


『月の王子』を一葉だけ残して……。



 『月の王子』は、二人で大切に育てていた『多肉植物』だ。


 彼はこの部屋から去る時、自分の荷物と一緒に、二人の大切な思い出の『月の王子』も連れて行ってくれた。


 ……私が精神を正常に保てているのは、その事実があるからだ。


 だって、私を本当に嫌いなら、『月の王子』はここに置いて行く筈……でしょ?



 彼が居なくなってぐ、私はこの部屋にひとりで残る事にえ切れず、部屋を出る決心をした。


 荷物を全て片付け、掃除をしていたら、クローゼットの隅に『月の王子』の葉がひとつだけ残っていた。


 ……奇跡だ! きっと神様が、私に奇跡を与えて下さったんだ!


 私はその葉を無くさないよう、大切に持って、その部屋をあとにした。



 引っ越しが住んで数日後……


 月の王子から、細い『根』が数本伸びていた! ……私は感動のあまり、嬉し涙を流してしまった。


 ……お花屋さんや図書館で、月の王子の育て方を調べ、多肉植物専用の土を買って来て、そこに植えた。


 それから数週間後……


 土にしっかりと根付いた月の王子の葉から、とても可愛らしい、小さな子葉が生え始めた。


 その後は、子葉がぐんぐん成長し、茎が伸び……数ヶ月後には、以前と変わらない、凛とした月の王子に成長した。



 私は、月の王子を引き抜き、地面に叩きつけ、かかとで磨り潰してやった! 地面には緑色の液体がコンクリートの上でどす黒く変化し、原型をとどめていない皮だけが残った!


 あ〜、スッキリした♪ 神様は、私が綺麗サッパリあいつを忘れられるように、月の王子の葉を残しておいてくれたんだろう! 


 神様! サンキュ!


 今度は、も〜っとイイ男をゲットしてやる!


 そんな決意を胸に、私はあっちやこっちを大胆に露出した服を着て、夜の街に繰り出した!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る