風化(メモリーロス)


なにもかもなくなったとか

誰かが消えてしまったとか

そんなことじゃなくて

そんなことじゃなくて


風が砂をはさらうように

吹き飛んで

消えてしまったことにも気付かなくて

忘れてしまう


記憶の中に残らなくて

残像の中で

どんな笑い方をしていたの?

どんな声だったの?


全部、あいまいで

擦り切れた記憶は

もう再生できない


まるで当たり前のように

昨日からの連続で

今日が来て、そして明日が来るけど


昨日まで居た、君のことを忘れて

当たり前になってる


記憶の中に残らなくて

残像の中で

どんな笑い方をしていたの?

どんな声だったの?


忘れることは簡単で

記憶にとどめることが

こんなに難しくて


もう日常の中に埋没して

日々は繰り返し風化していく


どんな笑い方をしていたの?

どんな声だったの?


僕が君のことを忘れていくように

僕があの日の僕を忘れて

僕があの時のことを忘れて


どんな笑い方をしていたの?

どんな声だったの?


全部、あいまいで

擦り切れた記憶は

もう再生できない


もう、再生できない。








________________



ノベルアップ+で公開していた

台風19号被害支援プロジェクトである【届け、言葉の力PJ】に参加した詩集

「君の言葉を「希望」と言わせておくれ」に掲載した4編のうちの2編目でした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る