それぞれの過去と思い 二十七話

「メルダリン…いや、ジーナはライに話したのか?」


ホールに戻り、窓際に寄りかかっているとサイジが話しかけてきた。どうやらやっと周りの者達と話が終わったらしい。


「今話していますよ」


「そうか」


「あなたは何を考えているの?」


ルーミはサイジを見上げる。


サイジは一体何がしたいのだろう。ジーナを買い、ジーナの復讐を手伝い、しかし自分のギルドにいれ暗殺者として使ったり自分の願いのためにジーナを使う。


敵か味方か、ほんと読めない相手だ。今回のパーティーだってジーナとライを合わせるために仕組んだのだろう。


「別に、特に何も考えていないな」


「とぼけないでください。今回のパーティーだって、ライとジーナを会わせるために私たちを呼んだんですよね?森での出来事だってわざとジーナを向かわせたんでしょ?それに、宿にいた時も私にジーナの事を話してくれた。あなたは、ジーナとライを仲直りさせようとしたかったんじゃないんですか?」


ルーミの問いかけにサイジは答えなかった。ただただルーミを見ていた。そして窓の外を見る。


サイジの目の方向にはライとジーナがいた。二人はベンチに座っている。


「……君の言っていることは正しい。確かに俺はあの二人を仲直りさせようとしていた。前にも言っただろう?ライとジーナは本当に仲が良かったって。俺はそんな2人を見て思ったんだ。幸せになってほしい、と。けれどジーナの過去を調べ、それをジーナに話すとあの子は復讐する、と意志を固めてしまった。そして俺に買われることも。まあ最初は軽い気持ちだったよ。ジーナが決めたことだし俺は特に何とも思わなかった。だが、ジーナが消えたあとのライを見た時、ライにジーナがいた頃のような笑顔はなかったんだ。だから俺は罪滅ぼしとしてあいつら二人を会わせた。まあ、ジーナが毎日俺の頼んでいることを何でもしてくれているからご褒美で会わせた、というのもあるがな」


本当なのか疑ったがサイジの目は嘘をついているようには見えなかった。


サイジの目にはまるで娘のように映る二人の姿があった。


それがどういう意味を指しているのかは分からないが、きっとサイジが思っていることは嘘では無いのだろう。


「もし、ジーナがライの元に戻りたいと言ったらどうするんですか?」


たとえ二人の幸せを願っているとしても、自分の物にしたのを手放さないだろう。


「まあ、俺はどっちでもいい。あいつがライの元に戻りたいとならまあ考えはするかな」


意外だ。驚いて目を見開く。


「おいおい、俺を何だと思っているんだよ」


サイジはルーミの心を呼んだかのように言った。ルーミはフッと笑って


「まあ、前よりはいい印象を持つようになりましたよ」


出会う前のサイジの印象は最悪だったが、関わっていくうちに段々と理解できるようになった。印象もマイナスからプラスになれた。


「私はこれにて帰ろうと思います。ジーナはもうこっちには戻らないと思いますし、ライはきっとどちらにいくか迷うと思います。私はライとは離れたくないですが、ライにはジーナと一緒にいてほしいんです。せっかく会って打ち解けられたのに離れてほしくないですよ」


ライたちを見つめながら言う。ライにはたくさんお世話になったしこれからも一緒にいたい。けど、ライには幸せになってほしい。


ジーナと一緒の道へ行くのは危険だけれど、ライはジーナの今までをきっと受け入れている。その上でジーナと一緒にいたいだろう。


今あの場に向かったらライは迷うだろう。どちらに行くか。



「…こっちにくると危険な目に遭うかもしれないんだぞ。それがライにとって幸せなのか?」


「そこはあなたを信じますよ」


ニコッと笑いサイジを見る。サイジはフッと笑い言う。


「まさか君が僕を信じるなんて。意外だな」


「今までの話を聞いてあなたがあの二人を不幸にするとは考えられませんね。幸せになってほしい、と言ってるのに不幸にするなんて矛盾してるじゃないですか」


「まあそうだな」


「それじゃあ私は帰ります。ライのことお願いしますね」


サイジは躊躇いながら


「はいはい」


ニコッと笑い外へと向かった。

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