それぞれの過去と思い 十四話
その日は近くの宿に泊まった。お金はサイジが出してくれた。一週間この宿に泊まれる。
あの後、サイジは笑いながら謝ってきた。
ルーミはサイジの言葉を聞かず部屋を出る。数分後、サイジと他の二人も部屋から出てきた。
そしてちょっとしたお詫びだと言ってここの宿代を払ってくれた。いい奴なのか悪い奴なのかよくわからない人だ。
「これで真相が分かったな。ライの友達、ジーナも生きていたし、マスターの居場所もわかった」
「一件落着かな」
ルーミが伸びをしてベッドに飛び込む。ふとんはふわふわで気持ちが良い。今日はよく眠れそうだ。
「…ジーナを…ジーナを自由にさせてあげられないかな…」
ライがポツリと呟く。イリスとルーミは目を合わせた。ライは未だ落ち込んでいて、今も部屋の隅で椅子に座っている。
サイジに真実を教えてもらい、これまでのことは全てジーナ自身で決めたことだというのがわかった。
ライはどういう気持ちで聞いていたのだろう。
昔のジーナとルーミがどんな感じだったのかは分からないが、今まで話を聞いてかけがえのない存在だったのがよく伝わる。
けれどそれはきっとジーナも同じ気持ちなのだろう。
ルーミは宿につき、部屋に行こうとした時にサイジに呼ばれた。無視しようとしたがサイジの顔があまりにも真剣だったため断るにも断れなかった。
そして、席につきこう言われた。
「君には伝えておくよ。ムーン、いや、ジーナがあんなことをしたのはライのためでもあるんだ。ジーナとライは本当に仲が良かった。赤の他人から見てもわかる。心が通じ合ってると。だからこそ、ライはきっと僕に買われることを知ったら止めるだろうし、会ってしまったら戻りたくなってしまう。難しい決断だっただろうね。自分の心を殺して、親友のことを思って決断した。そして、ジーナはライに自分のことを早く忘れて、幸せになって欲しかったから自殺を演じた。そうしないとライはずっと自分を探し続けると。ライの大切な時間を自分のために使って欲しくない。そうしてジーナはライの前から消えたんだ。ジーナだってライのことを忘れたわけではない。そこはライにも分かってほしい。俺の話は異常だ。またな」
「あ…」
ルーミの言葉も聞かず去ってしまった。
ライに伝えておくべきか分からない。私が首を突っ込むわけにもいかないし。ジーナを自由にさせてあげられるかも分からない。ジーナはサイジに五万ドルで買われている。
ジーナは論理上ではサイジの物でもある。
「ライ…」
ライもそれは理解きているだろう。
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