ヴィーナスの傷
羽弦トリス
第1話小林家の朝
回りは山や田んぼに囲まれた田舎の一軒家。番犬として飼っている、柴犬の大福は散歩以外は寝ている事が多く、見知らぬ人間には尻尾を振って喜ぶ。大福は番犬失格なのだ。
小林家の朝は早い。小林一郎、夏美夫婦は朝の5時には起床して、朝の歯磨きや着替えをすると、夏美は朝ごはんの準備に取り掛かり、一郎は大福の散歩に出掛ける。
長女の千紗はまだ部屋で寝ており、長男の健太は6時半に起きて身支度を済ます。
健太は歯磨きをして、メンズビオレで洗顔して、髪の毛をワックスで整え、スプレーで固めた。
地元で有名な進学校に通う健太は、お年頃。
だが、大きな反抗期はなかった。
7時前に一郎が大福の散歩から戻り、スーツに着替える。一郎は自分の腹の肉をつまんで溜め息が漏れた。
「中年太りか……」
夏美は4人分の朝食を作り、千紗以外の3人はテーブルで朝食を摂り始めた。
一郎は早食いで、食器を台所に運ぶとベランダでハイライトに火をつけて、食後の一服を楽しんだ。
そして、7時半になると一郎はTOYOTAのVitzで家を後にして、健太は自転車で学校に向かった。
夏美は2階の千紗の部屋のドアの外側に朝食を置いて、
「千紗、ちゃんと朝ごはん食べるのよ!」
と、言って夏美も自転車で職場に向かった。
2階のドアが開いたのは昼の11時を回った時間であった。
千紗は1日の大半を部屋で過ごし、家族が寝た時間帯にシャワーを浴びた。
彼女はネトゲ星人であり、人間生活に光を見出だせないので、徐々にゲームの世界にしか生きていることを確認することができなかったのである。
以上が、小林家の日常である。
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