5-6

「大丈夫か、可奈芽?とりあえず水でも飲め。」


「うん・・・、ありがと。」


そういい可奈芽は水を受け取り一口で飲み干して自分にお代わりを要求してくる。


従うままに水を汲んでくる。


「あのさ、小暮ってあの同じクラスの・・・。」


「うん・・・、そう。同じクラスのあの日お前と俺以外に居た唯一の生徒。」


「なんかあれだね。誰がやったかは知らないけど年頃の女の子にあんな事を・・・。いや違う、同じ人間にあんな事をできるなんて・・・」


「自分でも信じられないよ。すべての元凶ではあるけど知り合いであることに変わりはないもの。それがあんな姿になるなんて想像できるわけがない・・・」


「けどさ、あの写真なんかおかしかった。」


「ん?どういうこと?」


「普通ならあんな状態になったら苦痛に満ちている顔か、廃人のようになるでしょ?けど彼女は幸せそうだった。」


「それって・・・」


「うん、多分あの画像・・・」


可奈芽が結論を言おうとしているとき扉が勢いよく開いた。


「律都君・・・、これ・・・」


入ってきたのは嵯峨野さんだった。


同時に先ほどの画像の一部を拡大した画像を突き付けてくる。


「これは・・・?」


「単刀直入に言うとこれ妊娠検査薬。それも妊娠が確認された物。さっきの写真の中にあって、床に転がっていたのをうまく修正したもの」


「えーっと、つまり小暮の中に赤ちゃんがいるってことか・・・?」


「そういう事になるね。まぁ誰の子かは分からないけどこんな事をする人間のわりに性器の周りは綺麗だから多分・・・」


「俺を強〇したときにできた子供ってこと・・・?」


「そういう事になるね。どうする?」


「「って、えええええええええ!!!」」


「ちょっと待ってよ。みっちゃん。そんな事ありえるの⁉」


「ありえないとは言い難いよ。できるときは一発、それどころか入れた拍子にでたガ〇パーに含まれる精〇でも妊娠することはある。」


「となると童貞であるのに子供ができたってこと⁉」


「一応強〇とはいえ〇交渉しているから童貞ではないね。まぁ、君からしたら信じたくもないから童貞という事にするけどそういう事だね。」


「信じられない・・・。どうするんだよこれ・・・」


「まぁ、君に任せるよ。内容的に君に保養の義務はないし、はっきり言ってこんな事をする人間を相手にできるだけの実力はない。それこそ警察にでも通報したほうがいいとすら思うよ。ただそうした場合犯人がその場で何をしでかすか分からないし例え何もせずにお縄についたとしても小暮の社会復帰は不可能だよ。それなら見なかった事にしてすべての責任から逃れるのも手だとは思う。」


その言葉とともに全員が一斉に静まり返る。


しかし事実だ。


自分たちは一介の高校生だ。


こんなことをできる人間に対抗できる実力はない。


どんなに嵯峨野さんの家が大きいとはいえ、日本のような法治国家において私有の軍隊を保持しているわけがない。


警察に言って信じてもらえたとしても彼女が言う通り犯人が何をやらかすかは分かったもんじゃない。


というか相手はあの小暮だ。


ある意味自分が助けようと思えるような人間でもない。


それなら彼女たちや周りの人間を危険にさらす必要はない。


しかし、それは人として正しいのだろうか?


「律都君、さっきどうする?とは聞いたけど正直私たちに何かできる問題じゃない。残っている選択肢はただ二つ、


小暮の安全を考えず警察に連絡するか、


小暮を見捨て、犯人を野放しにするか、


この二択だよ。もう私たちにどうにかできるレベルを超えてる」


「そうだよ、あの子には悪いけど通報したほうがいいよ。見捨てたら犯人は野放しだからもしかしたら他の被害者が出るかもしれない。もしかしたら君は犯人に知られているから次のターゲットにもされかねないよ・・・。通報しよ?ね?」


「それもそうだね。可奈芽のわりにまともなこと言った。どうする律都君?」


「あのさ、もしだよ。冗談だと受け取ってもらってもいい。嵯峨野さんの人脈に警察の上層部っている?」


「いるよ。一番上とまではいかないけど大事件の捜査本部長になれるレベルの人間なら」


彼女はするりと答えた。


「っているのかよ!それなら犯人を捕まえれて小暮を救える方法があるかもしれない。」


「いいの?正直君に救う義理はないでしょ?」


「確かに救う義理はないよ。けど自分のエゴだけど救えるなら救いたい。もっと言うと自分にされた事への贖罪は十分されたと思う。だってこんな状態ならもう何もできないでしょ?」


「分かった。おじさんにお願いしてみる。それでその作戦は?」


「作戦は・・・・」


彼女に考えているすべての作戦を伝えるとすぐに連絡を取った。


すぐに返答はできないとのことだが多分できそうだ。


連絡が終わると彼女は「もう少し調べたいことがあるから戻る」と言い残し部屋を出た。


「いいの?本当に救っちゃって。救っても彼女はもう再起不能なんだよ?」


「うん。それでいいんだ。さっきお前が指摘した通りあいつはあの状態になるのを喜んでいるように見えた。それならあの状態で生かし続ければ喜びはそのうち絶望に代わるだろ?だからいいんだよ。」


「あんた顔に見合わずエグイ事するわね。」


「自分は被害者だからね。加害者は自分より苦しんでほしいもの。」


「少しあんたが怖くなったわ。」


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