第15話 ロリッ娘と ”金属蚯蚓”
その時、床に触れた掌と膝に振動が走った。
巨大な何かが近くで動いていた。
「ディーヴァ」
「わかっている、マスターナイト。振動および
「だ、だが?」
俺は冷たい床から立ち上がり、重い長剣を両手持ちに構えた。
ディーヴァと背中合せに立ち、 正体不明の存在の襲撃に備える。
「動体
「それってつまり……」
「イエスだ、マスターナイト。
その直後、ディーヴァが俺に抱きついて跳躍した。
「――!!?」
一瞬で視界が暗転したのは、薄らぼんやり光る床から離れ、上空に広がる闇に飛び込んだから――だけではなかった。
三〇Gを超える加重に、鍛え抜かれたマキシマム・サークの身体から意識が飛びかけたのだ。
ほんとうに瞬間的じゃなければ、ペシャンコになっていたところだ。
「あれに食われるよりはよいだろう」
ギュルリュルルルルルルッッッ!
神経に紙やすりを掛けるような音を上げて、足下から何かが追随してきた。
眼下の暗闇から現れたのは、
「あれはなんだ!?」
「あれは
ガチュンンンッッ!!!
無数の鋭い歯が並んだ ”吸盤状” の口が、〇.五秒前まで俺の両足があった空間を食い千切った
跳躍力の限界を超えたのか巨大なミミズは、そのまま放物線を描いて再び闇の中に落ちていく。
「う、嘘だぁ! あれがミミズだって!? ミミズってのは、もっとこう小さくて、にゅるんとしてて――うわっ!」
「話をしていると舌を噛むぞ」
今度はこちらが跳躍の最高点に達し、自由落下を始めた。
「着地後に再跳躍――
タンッ! と軽やかに着地した直後、シュタッ! と再度の跳躍。
そして俺は目撃した。
金属的な巨大ミミズが猛然と床から浮上して、たった今俺たちが着地した場所を吸盤状の口でこそげ取ると、再び潜行する姿を。
「な、なんだよ、あれ!? 床に穴を掘ってるわけじゃないのか!?」
「興味深い。どうやらあの
「同化だって!?」
ディーヴァにお姫さま抱っこされながら、俺は頭を掻きむしりたくなった。
デカくてメタリカルなミミズってだけでも十分過ぎるほどに異常なのに、そのうえ床と同化しているだって!?
そこからはもう、悪夢のような展開だった。
着地、跳躍、パックンチョ! 着地、跳躍、パックンチョ! のエンドレスに、俺の三半規管と胃袋は、甚大なダメージを負ってしまった。
「ディ、ディーヴァ……俺そろそろ……限界……いい加減、倒すなり逃げるなりしてくれると嬉しい……」
「マスターナイトを抱えたままの態勢で、攻撃に転じるのは危険だ。わたしとしては容認できない」
「だ、だったら逃げよう……」
「
(こ、この脳筋娘!)
「そ、それじゃ俺をどこかに置いて、それからあいつを好きにすればいい!」
俺を下ろしたあとなら、煮るなり焼くなり好きにしろ!
「だがあのワームは床に伝わる
「そ、それなら奴の気を逸らせばいい!」
俺はディーヴァの着地のタイミングを見計らって、手にしていた愛剣を力の限り放り投げた。
通常の倍の重さがある長大な
バキンッ!
床中から顔を出したミミズがあっけなく、その剣を粉々に噛み砕く。
(鬼畜騎士専用に打たれた大業物なのに!)
だがほんの数瞬だが、ミミズの意識は確かに俺たちから逸れた。
数秒に足りないわずかな隙だったが、ディーヴァには無限に等しい時間だった。
軽やかに着地して、ドサッと丁寧に俺を放り出すや否や、巨大なミミズに向かって疾駆した。
瞬きする間にトップスピードに到達した最新・最強のの汎用量子オートマトンは、爆増した運動をエネルギーをそのままに、メタルワームに突っ込んだ。
(跳躍しなかったのは、さすがだ!)
瀬名岳斗ではなく、マキシマム・サークの俺が賞嘆した。
自律飛翔できるならいざ知らず、単に空中に飛び上がっているだけでは機動の自由を縛っているだけだ。
身体能力だけでなく、ディーヴァの戦闘センスは信頼できるように思えた。
そして――。
それ以上に、ディーヴァの身体能力は信頼できた!
っていうか、直径二メートルはあるメタルワームの胴を手刀の一閃で両断する姿を見せられては、信頼するしかない!
「しゃーーーーっっっ!!!!」
渾身で快哉のガッツポーズ!
しかしこれが、渾身の大チョンボ!
真っ二つになったメタルワームの上半分が絶命することなく宙空で向きを換えて、猛然と俺に突き進んできた!
「嘘おぉぉっっっ!!!?」
悲鳴を上げずにはいられない!
しかも最悪なことに、ミミズの下半分がこちらはこちらで意思を持ったように、ディーヴァに襲いかかった。
咄嗟に思った。
俺はハイセリア最強の鬼畜騎士、マキシマム・サーク。
例え ”
この手に、
剣・さ・え・あ・れ・ば。
そう俺の愛剣は目の前に迫るメタリックなミミズに、綺麗さっぱりと平らげられてしまっていた。
要するに――。
今の俺は、丸裸同然!
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