第12話 お城で働くってまじ?
馬車の中で、あたしはあちこちキョロキョロしていた。
だって落ち着かないっての。
馬車には殿下の2人っきりなわけで。
「あの殿下……」
「ああ、呼び方だけど、城では殿下って呼んで。でも2人の時はいままでどおりアルでいいから。むしろそう呼んでくれるか」
この男、今日人の話きかないな。いや、いつもか。
ジト目になってるだろうあたしを見ても、顔色ひとつかえずにニコニコニコニコ。
なんだってんだ。
ていうか、城で働くのか。何するんだろう。
あたしの考えを読んだように、アルクスが仕事の説明をしてくれる。
あたしは一生懸命聞くけど、やること多くてわからなくなりそうだった。
「まってぇ、混乱する!」
「ははは。大丈夫。その辺りはゆっくり使用人たちが教えてくれるよ。みんな君みたいに、子爵家や男爵家の者たちだから、話が合うといいけど」
「それ本気で言ってるの」
思わず自分をさして聞くと、アルクスは目を逸らした。
ほらぁ! あたしのガサツさは貴族の娘らしからぬ者なんだって! うまくいくわけあるか!!!
「とにかく! ゆっくり覚えればいいから。それに多分俺の身の回りのことを任されると思うんだよね」
「いきなりそれってすごいことなんじゃ」
「まぁ、そういう場合もなくはないから、気にするな」
気にするなっていわれて、気にしないでいられるほど神経図太くないですけど?
色々考えても仕方ないか。
やることやるだけだ。
それにしてもいきなりだったなぁ。
あたしは馬車の椅子に脱力する。
伯爵家からフレデリカの様子を伝えるために城へ行く。行ったら一応城の仕事をする。それはわかる。わかるけど、無茶。強引。変。絶対変。
しかもその理由が……。
あたしは急に暑くなってきたことに気づいた。
いや、あたしの顔が熱いんだ。城で働くって言われて、びっくりしてそのまま流しちゃったけど流しちゃったけど、この王子、あたしのこと好きって言った?
いや友達としてよ、わかってるけど。そんなことフレデリカ以外からは言われたことない! しかも異性! あーー! 顔が! 顔があつい!
「大丈夫!」
至近距離! 近い!
「大丈夫!!!!」
と、とにかく。
「アル。あのさ……」
「なんだ?」
「友達だからって異性に、好きとかあんま言わん方がいいと思うんですよ」
「…………………」
真っ赤になってるあたしを助けると思って、なんか言え!
「うん。わかった」
「わ、わかればよろしい」
「いや、いかにむずかしい攻略対象なのかってことがわかった」
「……? どういう意味?」
理解できん。
首を傾げてみても、よくわからない。
「ああ、うん。わからなくていいよ。今は」
なんとなくムカつくが、今日は王子っぽい格好をしているので、脛を蹴るのは勘弁してやろう。
気づけば、お城の中へ馬車は進んでいた。
まず城の正門から城までの距離が遠すぎるって、どういうことよ。
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