第11話 またきたの?
あれから、アルは来なくなった。
これでよかったと思う反面、ため息が増えたフレデリカが心配だった。
「フレデリカ。大丈夫?」
「ええ。平気よ。でも殿下忙しいのかしら」
「う……ん」
あたしが来るなって言ったとはなかなか言えそうもない。
フレデリカが今度はあたしを心配そうに見ていた。
「なぁに? フレデリカ」
「レナは寂しくないの?」
「寂しくない!」
こともないけど。仕方がないのだ。アルクスが頻繁に伯爵家にくることは、誰にとっても特にならないのだから。
「お茶、冷めちゃったな。新しいの入れ直すよ」
そのとき、扉を叩く音がした。
「はい?」
「殿下がいらっしゃいました」
え!?
驚いて、フレデリカを見ると、フレデリカも驚いている。
ちょ、あいつ、人の話聞いてなかったのかよ!
「大丈夫よ。どうぞ」
フレデリカ!!!
あたしの心の叫びも虚しく、扉が開いてしまった。いつもより随分派手な格好をしたアルクスがそこにいた。
うわぁ。初めてみる王子様の格好だ。じゃなくて! なんでくるかなぁ!
若干泣きたくなって、あたしは部屋の隅へ移動しようとする。それをアルクスが制した。
「レナ。まった。実は今日は君に話があってきたんだ」
「はい?」
「と、その前に、フレデリカ」
「はい」
「突然来なくなったり、押しかけたり、すまないな」
「いいえ。お気になさらず。驚きましたけれど、突然いらしたり、いらっしゃらなくなったり……いつものことではありませんか」
と朗らからかな様子。
え、いつものことなの?
「まぁ、それに関しては幼馴染の君に甘えているのは自覚している。今回もそれが原因な気がするが。ともかくだ」
そう言ってあたしをみたアルクスの目は真剣だった。
どうしよう。なんか怖いんだけど。
「それで、レナ。実は相談があってきたんだ」
「まぁまぁ、殿下、お茶でも飲みながらゆっくりお話し致しませんこと?」
そうだそうだ。なんでそんな急いでるんだ。
「ああ、そうしたいところなんだけどね。あまり長居するのも良くない。最近悪い噂が流れていることをフレデリカは知ってるか」
「ええ、存じております」
え、知ってるの!?
「それが理由で、殿下はいらっしゃらないのだろうとも。わかっておりました」
そうなの!?
ちょっと驚きの連続なんですけど。
「うん。だが、俺はフレデリカの様子が気になるし。まぁ他にもここにくる理由があったから」
あたしに会いにっていうね。友達に会いにきたら、その友達の友達と噂になっちゃったって結構笑える展開よね。
「差し当たって、解決方法として、レナが城で働いてくれると助かるんだが」
「……はい?」
「まぁ、それはいい案ですわ」
「うん。で、ここから通って貰えば、毎日君の様子を聞くこともできるし」
「あら、殿下、そのような。ふふふ。よろしいですわよ」
「君には本当に筒抜けで恐ろしいくらいだな。ともかくそうすると色々解決するんだ。俺の心情的にもいいし」
「いや、あの」
呼びかけてみるけど、そのまま放置。
「じゃあそういうことで」
「わかりましたわ」
「いや! わかってませんけど!?」
叫ぶあたしを2人が同時にみた。変なもの見るような目でみないでくれます!?
「簡単なことだよレナ」
「何がですか!」
「君が好きだから君にそばにいてほしいので、城で働かないか。と言ってるんだ」
「そんな横暴ありますか! いくら好きだからって……え、城で働く!?」
「そこに反応するの? 予想外すぎて俺ちょっと今覚悟決めたりしてたんだけど、予想外すぎるんだけど」
困惑した顔をされても、困惑してるのはあたしなんですけど!?
「ということで、外に馬車をまたせているから、行こうか」
「いってらっしゃいませ」
「いやいやいや! まてぃ!」
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