第6話 助け

それからしばらくしてお姉ちゃんらしき赤ちゃんが家にやってきた。ただ、あたしにとってどうしても気になることがある。赤ちゃんの成長があまりにも速すぎる。

だって家にやってきて1週間でつかまり立ちが出来るようになって、1ヶ月後にはトイレに1人で行くようになった。ママは違和感なんて何も持たず、「ゆりちゃんはすごいですね〜」と、赤ちゃんを褒めてばかり。

赤ちゃんが産まれて大体半年が過ぎると赤ちゃんは大きくなっていてお姉ちゃんになっていた。

「サキ〜、早くしないと送れるよ〜」

「あ、うん……」

これが朝の始まり。

お姉ちゃんが亡くなる前、いつもこう言ってくれたし、クローンのお姉ちゃんもそう言ってくれる。冷蔵庫のプリンを晩御飯の前に食べようとしたら怒ってくれるし、バドミントンだって得意だし、傍から見たら普通の家族だ。

でも、家に帰りたくない、お姉ちゃんが来てから何故かそう思うようになってしまった。

「サキ、大丈夫?」

「普通」

クローンのお姉ちゃんにどうしても冷たくしちゃうのは、あたしの錯覚なのかな? そのまま歩いて学校に行って、授業を受ける。それから、部活して家に帰る。これがいつも通りの日常。校門を出て家の方向へ足を向ける。

アスファルトに何かが滴っている。首元に違和感を感じてあたしは首筋をそっと手で撫でた。液体のものがついている。今日はそんなに暑くないのに。体育の時さえ汗はかかなかったのに。

「……汗?」

そう言った瞬間、お腹が痛くなった。ギューッとお腹を締め付けられるような感覚。立てない。あたしは校門の前でしゃがみこんだ。学校には戻れない。もう最終下校時刻は過ぎている。

「どうしよう……」

救急車なんて呼べない。きっとママとお姉ちゃんが来る。

じゃあ、誰に助けを求めよう……?あたしの味方をしてくれる人……。

「……パパ?」

あたしはスマホをポケットから取り出して電話をかけた。

「パパ、今学校の前。助けて……」

そうスマホの画面の前で言うしか無かった。

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