第3話 出会い
コンコンとドアをノックする音がした
あたしはママの代わりに「はぁい」と、答えた。
入ってきたのは、男の人。白衣を着ているけどお医者さんではなさそう。
「西野さんで、お間違いないですか?」
「はい」
涙で答えることのできないパパとママの代わりにあたしが答える。あたしはママの腕の中から飛び出した。
「そこに居るのは、君のご兄弟?」
「はい、あたしのお姉ちゃんです」
無駄に丁寧にあたしに話しかけるおじさんにあたしは警戒心が湧いた。
「あの、どちら様、ですか?」
落ち着いたパパが話に入る。
「私、国立化学研究所クローン科の田中誠二と申します」
おじさんはパパに名刺を渡した。パパは「国立化学研究所……?」と、独り言のように首を傾げてボソッと言った。
「国の科学研究機関です。私は人間クローンを担当しております」
人間クローン……そういえば最近テレビで、人間クローンを作る法律が出来た、と言っていたなぁ。あたしの中ではそれくらいの印象しかない。
「私たちに何かあるんですか?」
「ええ、あそこにいるあなたの娘さんを生き返らせようと考えております」
生き返る……!? どうやって……? あたしは頭が混乱してきて爆発しそうだった。あのおじさん、絶対に変。あたしは後ずさりをした。その時、ママはやっと顔を上げた。
「本当に生き返らせることが出来るんですか?」
「実験なので、保証は出来ませんが、可能性は大いにあります」
ママは意外にもおじさんの話には興味津々だった。
「こちら、実験の概要となりますので、ご覧の上、裏面の契約書にサインをして、国立化学研究所までお送り下さい」
おじさんはパパに紙を1枚渡した。パパは「どうも……」と、腑に落ちないような感じで言った。
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