第17話に、逃げられない?!

あのあとモンスター狩りに行きカズとの持ち前の身体能力の差に打ちのめされながらもLevelを2つあげることができた。





「まず薄力粉と初心者ポーション粉を合わせて10袋分、バターと砂糖はそれの半分っと。

よしっ、あとはこれを混ぜるだけ!」


コネコネ、モミモミ、モミモミ、コネコネ…

まとまるまでひたすらに混ぜ続ける!



粉っぽさがなくなったな。うんうん、いい感じ!

これを一口大にちぎって丸めて押しつぶす!

これを鍋で焼いてー…。



たたーん!初心者ポーションクッキーの完成!!

肝心のお味は…


「うん!微妙!まずいって訳じゃないけど、特別美味しいわけでもないなー。まぁ苦くはないからいっか!砂糖はもう少し減らしてもいいかもね。」


あ、そうだ忘れないうちに[鑑定]。



・初心者ポーションクッキー

品質1

初心者ポーションで作られたクッキー。

抹茶のような味がする気がする。

可もなく不可もなしな味。

50回復クールタイム10秒



やっぱり回復量は下がっちゃってる。

でも50だからまだ許容範囲かな。

レベルが上がって体力が高くなって来るとダメかもしれないけど。




よーしっ大量に作って無一文を抜け出すぞ!





「カズ!ついにクッキー出来たよ!!来れそうなら味見しにきてよ、噴水前にいるから。」


『おぉ!行く行く。今畑だから5分くらいで着くと思う。』


カズにも味見してもらって不味さで悶絶されなかったら露店でも売ろう!

緊張するけどこれもお金のためだ。














「美味しい!ってほどでもないな…言うのは悪いが微妙だ…。

まぁ回復とクールタイム見たら十分売り物になるだろ。」


「うーん、やっぱり砂糖とバターだけじゃ初心者ポーション粉のまずさを殺しきれなかった…。」


ポーション粉のまずさの異常さが少し浮き彫りになってきている気がしなくもない。

結構砂糖とバターを入れたつもりだったけどあまり美味しくならなかった。


まぁ、とんでもなく不味いわけではないし試しに露店で売ってみようかな。





「ここら辺がいいんじゃないか?」


僕とカズは今、街の中心にある広場に来ている。

ここは主に露店が並んでいてその種類は様々だ。プレイヤーも多くいる。

少し隅の方だが初めてなのでここの方が緊張しなくていいのかもしれない。


「クッキーは5枚で一袋にして、値段は100Gくらい?高いかな…。」


「いや、それくらいでいいんじゃないか?

初心者ポーションが1本50Gだからな。」


ふむふむ、次露店を開くときは事前に価格のリサーチをしておかなきゃな!




「初心者ポーションクッキー売ってまーす。

100Gでーす。」


露店を開いてかれこれ1時間なかなか売れない…。こんなものなのかな、心が折れそう…。


「ケイ、そう落ち込むなって。初めから出来るなんてことないだろ?

根気良くやればいいんだよ。

今日はまだまだ時間もあるしな。」


そうだよ、初めからできないが普通だもんね。


「カズ、ありがとう。頑張る!」




そのあと30分ほど2人で声を出していると。


「これってどんな効果なんだ?」



お客様第一号だ!


「えぇっと、効果は50回復クールタイム10秒です!」



「なるほど…。3袋貰おう。はい、300G。」


「ありがとうございます!」


やった!やっと買ってもらえたー。

そういえば買うのにみんな効果が知りたいよね、声を出すのに効果まで伝えたらもっと人が来てくれるかも!


「ケイ、嬉しいのはわかったから服の裾を引っ張るのはやめてくれ。

…振り回すのもダメ!落ち着け!」


落ち着いてられないでしょこれは!

僕が作ったものが売れたんだよ?!


「まだ20袋残ってるからな、どんどん売るぞ金欠。」


くっ、言い返せない。


「そんな眉間に梅干し作ってても客は来ないぞ?スマイルだスマイル。初心者ポーションクッキー売ってまーす!これだ、この顔だ。」


うわ爽やかが目に悪い。

この人爽やかイケメン顔で殴ってくる、心を。


「あのぉ〜、2袋くださぁーい!!」


「あ、はい200Gです。」



この人すっごいカズのこと見るな…。

チラ見がもうガン見になってるよ、顔につられてきたのかなー。

まぁクッキーが売れるならいっか!


お!ガン見女子が動いた!

ガン見女子の攻撃!


「これも縁っていうかぁ、運命って感じですよねぇ!なのでぇ、マリぽよフレンドコード交換したいなぁ〜。」


初手からなかなか鋭い攻撃です!

マリぽよの名前は伊達ではない!!がんばれマリぽよ!負けるなカズ!


カズ選手のターン!


「今、友達のお世話で忙しいから手が離せないんだ。フレンドコードはまたいつかねー。」


カズ選手、ガン見女子マリぽよからの攻撃を物ともせず素早い切り返しです!

さすが爽やかイケメン!学年一の美少女佐伯さんを振って泣かせた力は今も健在だぁぁ!


おぉっとカズ選手の攻撃が強すぎるせいかこちらにも流れ弾が!

ガン見女子がガン見を通り越してこちらを睨んでくる!!その顔は般若のようです!

被弾する前に安全な場所に退きたいと思います。

秘技!


「あはは、あとは若いお2人でっっ!邪魔者は失礼しますー(棒)」



これで安全圏まで退避できるでしょ、おぉーっと?カズ選手、僕の服を離しません!

その様子にガン見女子マリぽよはさらに般若に磨きをかける!


「…天使くんもこう言ってるし。少しおしゃべりしませんかぁ?マリぽよのこともっと知って欲しいなぁ〜。」


「脳の空き容量がなくてね、ごめんね。ケイほら今から一緒に俺の畑に行く約束してたもんね?そんな顔しなくてもすぐに行こうね?ケイが迷子にならないように手繋いで行こうね。」


「え、そんな約束してな、


「手、繋いで行こうね?今すぐ行きたいよね?」


逃げられない!

絶体絶命!

その時、僕がとった行動とは!?



次回もまた見てくれよな!!





カズの畑に無理矢理連れて来られたケイです。

あのあとガン見女子マリぽよは撤退して行きました。

去り際に僕にだけ聞こえる声で「顔と名前覚えたからな…。」と言ったのにはちびるかと思いました。カズが迂闊に僕の名前を呼んだせいなのでどうにか責任をとってほしいと思っています。

女の怖さを身に染みて実感しました。

もうカズとは一緒に歩きたくないなと思いました。

ただ、今すべての原因のカズに軽々と抱き上げられているケイです。

逃げられません。助けて。



「色々言いたいことはあるが、ケイ。これがニンジンだ。」


こいつ誤魔化しやがったとか思ってません。


「立派なニンジンだねー。カズは主に野菜を作ってるの?」


思ってないので誤魔化されてやることにします。優しいので!


「野菜はニンジンとトマトとダイコンを育ててる。リンゴの木もあるぞ、ケイ好きだろリンゴ。」


はいリンゴ大好きです。

今日のことはなかったことにしましょう。

なので僕にその美味しそうなリンゴを下さい。


「待て待て切ってやるから。」


カズの畑で採れたリンゴはとても美味しかった。

品質が高いのかもしれない。


「生もいいけどアップルパイ食べたくなるね〜。」


「!!いいなそれ!ケイ作ってくれ!

リンゴなら大量にある。」


うーん、何個か材料が足りない気がするから確認しないとな〜。

っと、それよりも。


「カズ温泉探しはどうする?」


まだ僕はこの街の近くしか行ったことがないから温泉なんておの字も知らない。


「うーん、見つかってはないが山の方に行けばあると思うんだけどなー。」


ふむふむ、たしかに山に行くのが1番確実そうだ。

世界樹に登った時に山は見つけたが…、


「山って世界樹から見えたやつだよね?遠くない??」


「やっぱ現時点じゃ無理だよなー。

多分あの山に行くまでに何個か街があると思う。」


今すぐは無理か、残念だけど仕方がないよね。


「じゃあとりあえず目標は温泉にしようかな!」


「そうだな。じゃあまずやることはアップルパイ作り!ケイがな!」


うーーん、言いたいことはいっぱいあるけどこんなに美味しいりんごの前ではアップパイを作るしかないよね?!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る