Ho-ko 孕すめんと(R15版)

碗古田わん

一、始まりの日

「はぁ……はぁ……はぁ……」 

 男女の荒い息が部屋中を満たしていた。

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 場所は放課後の保健室。

 窓から日差しはさしているが、天井灯は消えているのでどことなく薄暗い。

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 ベッドの上では、全裸の女子生徒が横たわっている。

「ねぇ、本当にするの?」

 女子生徒は自分の上に覆い被さるこちらも全裸の男子生徒に聞いた。

「あったりめぇーだろう」

 さも当然と言わんばかりに男子生徒は答えた。

「今さら怖じ気づいたのかよ?」

「……そんなことないけど…………」

 ニヤリと笑う男子生徒の視線から逃れるように女子生徒は顔を背けた。

「じゃあ、いくぜ」

 そう宣言して、腰をあてがう男子生徒。

(どうして、こんな事になっちゃったんだろう……?)

 それを上の空で聞きながら、女子生徒はこうなるまでのことを思い出していた。


 それは大型連休ゴールデンウィーク開けの五月も半ばのことだった。

 私立五十公野学園しりついずみのがくえんの一年C組の教室は、今日の全ての授業を終えて、喧騒に包まれていた。

「う~~~~~~ん」

 自分の席で蒼龍奉子そうりゅうほうこは大きく伸びをした。

 ちょっとクセのある髪をショートボムにして前髪もパッツン。黒目がちの瞳にややぽっちゃり頬。小さいが肉厚のある唇をした少女だ。

「お疲れー」

 と、髪はショートヘア。猫を思わせるような目付き。ほっそりとした顔立ちの長身の女子生徒が寄ってきた。クラスメイトの沢村渉さわむらあゆむだ。

「眠かったねぇ」

 同じくクラスメイトの新垣聡美にいがきさとみも寄ってくる。

 ゆるふわロングでぽっちゃり顔の少女だ。いつも眠たそうな目をしているが、今日は一段と眠そうだった。

「体育のあとの古典はクルものがあるよねぇ」

「あたしゃ、半分寝てたよ」

 奉子の言葉に、欠伸を噛み殺しながら渉は言った。

「いや、完全に寝てたでしょう?」

 すかさず聡美がツッコむ。

「そう言うさとみんは?」

「まぁ、あたしも寝てたけどさぁ」

 ケタケタと笑う聡美につられて、奉子と渉も笑った。

「二人はこれから部活だよね?」

 渉はバレー部。聡美は手芸部に所属している。

「そう、だからシャキッとしないと」

「じゃないと部活中に寝ちゃいそう」

 渉は自分の両頬を軽く叩き、聡美は目をこすった。

「ホーちゃんは、もう帰るだけだもんねぇ」

 聡美が聞くと、奉子はにっこり笑った。

「うん、早くお布団に入りたい」

「気が早いよ」

 笑う渉に、机の上に平伏せてた奉子は、

「本当は今すぐにでもお布団に入りたいよ」

 と大きく欠伸をした。

「そんなこと言ってたら、また電車、乗り過ごすよ?」

 そんな奉子に聡美はちょっと意地悪そうな笑みを浮かべて言った。前にも眠たそうに帰った時、電車を乗り過ごしたことがあったからだ。

「あっ……やっちゃうかも」

「やるんかい」

 ヘラッと笑った奉子に、渉と聡美は困った顔をした。

「じゃあ、あたしら行くけど、ちゃんと帰るんだよ」

「バイバイ」

「うん。バイバイ」

 席を離れる渉と聡美に小さく手を振ってから、奉子も席を立った。

「さてっと」

 机の横から学生鞄を取り出す。

「あたしも帰りますか」

 そのまま教室を出る。

「ふわぁぁぁぁぁっ」

 廊下を歩きながらまた一つ大きな欠伸をする。

「お家帰ったら、本当に1回寝ようかな」

 そんなことを考えながら廊下の角を曲がると、

 ドスッ!

 見知らぬ男子生徒とぶつかってしまった。

「あいたたた」

「いてっ!」

 はじかれたように二人は廊下に尻餅をつく。

「ったく、なんだってんだよ……!」

 顔をしかめた男子生徒は、前を見た。そこでは奉子がスカートの裾を乱して尻餅をついていた。

「……おっ」

 純白のショーツが露わになっている。男子生徒は幸運なものを見たような顔をした。

「あっ!」

 その視線には気づかず、奉子は男子生徒を見ると慌てて立ち上がった。

「大丈夫ですか?」

 そして、まだ尻餅をついている男子生徒に駆け寄る。

 そんな奉子を男子生徒は舐めるような視線で全身を見回した。

 それから、

「いててててっ」

 と突然、大袈裟に手で足を押さえた。

「大丈夫ですか? 足が痛いんですか?」

 奉子は焦った。

「いたたたたたっ」

「どうしよう……」

 なお足を押さえて痛がる男子生徒に、奉子は完全にパニック状態でオロオロすることしができない。

「誰か人を呼んだ方が……」

 ようやくそう思いつき、その場を離れようとした。

「いや」

 だが、男子生徒がそれを止めた。

「肩を貸してくれねぇか?」

 顔をしかめながら、男子生徒は言った。

「保健室まで連れってくれ」

「はい、わかりました」

 足をかばいながら立った男子生徒に奉子が肩を貸す。

 そのままゆっくりと廊下を歩き出した。

「ごめんなさい。あたしがボーッとしてたせいで……」

「ホントだぜ。ちゃんと前見て歩けよな」

 済まなそうに謝る奉子に、男子生徒は痛みをこらえるような顔で詰った。

「うううっ……ごめんなさい」

 落ち込みながらも奉子は、男子生徒を必死になって支えながら保健室まで来た。

「先生!」

 ガラッと勢いよく扉を開けると、保険医の城ヶ崎美砂じょうがさきみさが驚いた顔でこちらを見た。

「いったいどうしたの?」

 だが、肩を貸している男子生徒を見ると、直ぐにあっとなった。

 それに答えるように、男子生徒はアイコンタクトしてきた。

 美砂も視線で応じる。

「あたしが廊下でぶつかっちゃって、足に怪我をしたみたいなんです!」

 そんなやりとりには気づかず、奉子は早口で状況を説明した。

「とりあえず、ここに座らせて」

 それに対して極めて冷静に美砂は、椅子を差し出す。

 言われるままに奉子は男子生徒を椅子に座らせた。

「……先生、これから会議なの」

 と、突然、美砂がそんなことを言った。

 それから、棚から湿布と包帯を取り出すと奉子に渡す。

「だから、あなたが貼って上げて」

「えっ? あたし?」

 戸惑う奉子を無視して、美砂は後ろ手で手を振って保健室を出て行く。

「じゃあ、頼んだわよ」

 奉子は唖然とした。

「行っちゃった」

「なんでもいいから、早くそいつを貼ってくれ」

 男子生徒の言葉で我に返った奉子は、慌てて足の下にかがんだ。それから慣れた手つきでズボンの裾をまくり上げる。

「ここでいいかな?」

 男子生徒に確認しながら、湿布を貼る。

(あっ……なんかかっこいいかも)

 ようやく冷静さを取り戻した奉子は、男子生徒を上目遣いに見た。

 サラサラの髪に、ややつり目がちの大きな目と通った鼻筋。ほっそりとした顔をしたなかなかのイケメンだった。生足を見る限り、鍛え抜かれてはいないが、なかなかの筋肉質のようだ。

 そんなことを思いながらも、これまた慣れた手つきで包帯を巻いていく。

「なんか、やけに慣れてねぇーか?」

 それを眺めていた男子生徒は、訝しげに言った。

「えっ?」

 奉子は、ギクッとなった。

「そ、そんなことないよ」

 が、すぐに男子生徒の言葉を否定する。

「はい、終わり」

 そうしているうちに包帯を巻き終えた奉子は、あたらめて、

「本当にごめんなさい」

 と、頭を下げる。

「本当だぜ」

 男子生徒は詰るように言ってから、神妙な顔になった。

「なぁ、本当に悪いと思ってるのか?」

「うん」

「だったら、お詫びぐらいしてくれよ」

 頷く奉子に、男子生徒はニヤリと笑った。

「お詫び……?」

「そう、お詫び」

 首を傾げる奉子に、男子生徒は口元に笑みを浮かべて言った。

「あたしにできることならなんだってするよ!」

 それに対して奉子は、胸の前で両手を握りしめて真剣な表情で応える。

 その答えに男子生徒は上機嫌で笑った。

「じゃあ、脱げよ」

「えっ?」

 一瞬、その言葉の意味がわからず、奉子は固まった。

「それはちょっと……」

 だが、直ぐに理解すると戸惑った。

「何でもするって言ったのは嘘だったのか?」

「確かに、言ったけど……」

 意地悪そうな笑みを浮かべる男子生徒になお戸惑う。

「だったら、早く脱げよ!」

 その態度にイラッとしたのか、男子生徒は強い口調で言い放った。

 いきなり態度を豹変してさせた男子生徒に、さらに戸惑いながらも奉子はなんとか笑みを浮かべて聞いてみた。

「君は、あたしの裸が見たいのかな?」

「ばぁーか、そんなわけあるかよ」

 男子生徒は片眉をはねさせた。

「男と女が裸になれば、やることは一つだろ?」

「だよねー」

 奉子は自分の笑みが引きつっていくのを感じていた。

「ほら、早く脱げよ」

 怒気の混じった声で男子生徒は迫った。

「なんだったら、俺が脱がしてやろうか?」

「いやっ!」

 男子生徒が胸元に手を伸ばしてきたので、奉子は抵抗した。

「なんでもするって、言ったろう?」

 その反応にイラッとした男子生徒はそう吐き捨てた。

「それはそうだけど……」

「だったら、ほら!」

 困り顔をの奉子に男子生徒はさらに迫った。

「えーっ……でも……」

 後ずさりする奉子。

 そんなやりとりを繰り返すうちに、いつの間にか奉子はベッドまで追い詰められていた。

 ドスッ!

 あっ、と思う間もなく男子生徒は奉子をベッドに突き飛ばした。

「あいたたたた……」

 そのまま、奉子はベッドの上に文字通り押し倒される。

「乱暴なのは駄目だよ」

 むっとなった奉子は男子生徒に抗議した。

「だったら、いい加減、諦めろよ」

 それに対して男子生徒はイライラを隠そうともせずに言った。

 しばらくの沈黙。

「はぁ~~~~~~」

 奉子は諦めたように深いため息をついた。

「わかったよ……」

 それから男子生徒に言い聞かせるように言った。

「でも、乱暴なのは駄目だよ」

「大丈夫」

 男子生徒はいやらしい笑みを浮かべた。

「ちゃんと気持ち良くしてやるから」

 奉子は困ったような笑みを浮かべるしかなかった。

「もう……」

 それからのそのそとブレザーのボタンに指をかけた。

「じゃあ、ちょっと後ろ向いてて」

「嫌だ」

 奉子のお願いに、男子生徒は首を横に振った。

「脱いでるの見られるのって恥ずかしいんだけど」

「馬鹿だな」

 抵抗する奉子に男子生徒はニヤニヤと笑みを浮かべた。

「それがいいんじゃないか」

「はぁ~~~~~~」

 これは言っても無駄だと思った奉子は、再び深いため息をついてからブレザーのボタンを外すのを再開した。

 ベッドの上に膝立ちになった奉子は、ブレザーのボタンを全部外すとブレザーを脱いで枕の横に畳んで置いた。

 それからベストのボタンも外すと脱いで、ブレザーの上に畳んで置く。

「……」

 少し躊躇しながら、スカートのフックに指をかける。そのままジッパーを下まで下ろすとスカートを脱ぎ、膝から抜いて、折りたたんでベストの上に置く。

 その様子を男子生徒はニマニマと笑みを浮かべながら見ていた。

 全身にいやらしい視線を感じて、奉子は顔を真っ赤にして恥じらった。

 身体が熱い。

 でも、不快な感じはしなかった。どちらかというと心地よい熱が身体の芯から全身へと広がっていった。

 その感覚に戸惑いながら、ブラウスのリボンを外す。それからのそのそとブラウスのボタンを外していった。

 ブラウスを脱ぐと、ブラ透けよけのキャミソールが露わになる。

 同じくスカートの上にブラウスを畳んで置くと、目をギュッとつぶってキャミソールの裾に手をかけ、一気に脱いだ。

 これで身体を覆うのは、純白のブラとショーツのみ。

「まだ脱がないと駄目?」

 奉子はすがるような目で男子生徒を見た。

「あったりめぇーだろう」

 それに対して男子生徒は、さも当然とばかりに言い放った。

 今までのパターンから、これは何を言っても駄目だと悟った奉子は、諦めて背中に手を回した。

 ブラのホックを外す。

 直ぐに手を前に回して、ブラが落ちるのを抑える。肩から肩紐が落ちた。

「手が邪魔だなぁ」

「わかってるよ」

 楽しそうに注文をつける男子生徒に、奉子は頬を真っ赤にしながら答えた。

 意を決して手を外す。

 ブラが外れて、透き通るような白い胸が露わになった。

「結構、胸あるんだな」

 それを見た男子生徒は感心したように言った。制服を着た状態だとそこまで大きくは見えなかったからだ。

「Cカップぐらいか?」

「えっ!?」

 ズバリ言い当てられて、奉子は思わず声を上げた。

「よくわかったね」

「そりゃ、いろんな胸を見てきてるからな」

「そんなの自慢にならないよ」

 自慢げな男子生徒に、奉子は引き気味に言った。

「さぁ、あと一枚だぜ」

「わかってるよ」

 男子生徒が急かす。その言葉にむくれながらも、奉子はショーツの両サイドに指をかけた。そして、ゆっくりとショーツを下ろし始めた。

(うううっ……恥ずかしいよぉ…………)

 奉子は、目をギュッと閉じて恥ずかしさに耐えていた。しかし、身体の芯から溢れる心地よい熱はますます温度を上げていく。

 ショーツが下ろされ、薄いヘアに隠された下腹部が露わになる。

 その様子を男子生徒はいやらしい笑みを浮かべながら眺めていた。

 片方ずつ膝を上げて、足からショーツを引き抜く。

 男子生徒は改めて全裸になった奉子を舐めるような視線で見つめた。

 胸はさほど大きくはない。それでもCカップなのは腰が細いかだ。腰から臀部にかけてもしなやかなラインを描き、小ぶりだかが形のいい臀部を強調している。

(やっぱり……恥ずかしいよぉ…………)

 男子生徒の視線を感じて、奉子は顔を真っ赤にした。身体が熱い。その熱が心地いい。

(なんで、あたし、恥ずかしいのに心地よくなってるの……?)

 その感覚に奉子は戸惑った。

「よし! これでそっちの準備は整ったな」

 男子生徒は楽しそうに言ってから、ブレザーを脱いだ。

 ネクタイを外す。それからワイシャツのボタンを上から順番に外していく。

「ちょ、ちょっとまって……!」

 それを見た奉子は慌てた。

「君も脱ぐの?」

「あったりめぇーだろう」

 真顔で聞く奉子に、男子生徒はさも当然と言わんばかりに答えた。

「なんだ? 男の裸、見たことないのか?」

 男子生徒は、意地悪そうな笑みを浮かべた。

「そんなことはないけど……」

 その視線から逃れるように顔を背けながら、奉子は照れた。

「どうせ、ネットとかでだろう?」

「うん……」

 あきれ顔の男子生徒に、奉子は曖昧に頷いた。

「ってことは」

 ワイシャツを脱ぎながら、男子生徒は嬉しそうに聞いた。

「オマエ、処女なんだ?」

「!?」

 奉子はこれまでにないぐらい顔が熱くなるのを感じた。

「…………」

 それから、ぎこちなく頷く。

「まぁ、心配するな」

 ズボンを脱ぎながら、男子生徒は気楽に言った。

「処女の扱いには慣れてるから」

 それから妖艶な笑みを浮かべる。

「痛くないように、たっぷり濡らしてから入れてやるからな」

 その妖しさに奉子は背中をゾクッとさせた。

 男子生徒がTシャツを脱ぐ。それからボクサーパンツの両サイドのゴムに指をかけると一気に下へと下ろした。

 男子生徒の股間が露わになる。既に大きく勃起していた。

「きゃっ……!」

 顔を真っ赤にした奉子は、思わず両手で顔を覆った。

「いいねー、その純粋≪ウブ≫な反応」

 それに対して男子生徒はニヤニヤと笑った。それからベッドへと上がる。

「それじゃあ、始めるか」

「うん……」

 そこで時間が止まった。

 しばらくの間の後、呆れたように男子生徒が言った。

「てか、寝そべってくれねぇーとやりずらいんだけど?」

「あっ! そ、そうだよね」

 慌てて奉子はベッドに寝そべった。

「……どうぞ」

 それを見て男子生徒はおもむろに奉子の上に覆い被さった。


   ♢♦♢♦♢♦


 情事を終えた男子生徒生徒は奉子の上から降りると、ベッドの上にゴロンと横になった。

「いやぁー、出した出した」

 満足げな笑みを浮かべた男子生徒は、のっそりと起き上がった奉子に向かっていった。

「アンタ、最高だ……処女でこんなに気持ち良かったのは久々だぜ」

 しかし、当の奉子はふくれっ面で男子生徒を睨んでいた。

「ん?」

「……中は駄目っていったのに」

 男子生徒が頭に疑問符を浮かべると、奉子は恨めしく言った。

「赤ちゃんできたら、どうするつもりなの!?」

「知るか!!」

 怒る奉子を男子生徒は一蹴した。

 それからベッドを降りると脱ぎ捨てられた自分のズボンを拾い上げて、ポケットに手を突っ込んだ。そして、スマホを取り出す。

「あっ……」

 そう奉子が思ったときにはもう遅かった。

 カシャ!

 全裸の写真を男子生徒に撮られてしまった。

「この写真、ネットに上げられたくなかったら、俺が呼んだら来い」

「そんなぁ……」

 男子生徒の脅しに、奉子は絶望した。だが、選択肢はない。ここは頷くしかなかった。

「じゃあ、メッセのID、交換しようぜ」

「うん……」

 渋々頷いて、奉子は枕元のスカートのポケットからスマホを取り出した。

「あっ……」

 その時になって奉子は、大切なことに気がついた。

「君の名前は?」

五十公野翼いずみのつばさ、だ。オマエは?」

「蒼龍奉子だよ」

 そこで奉子はハッとなった。

「……って、五十公野って」

 驚く奉子に翼はドヤ顔で言った。

「そう、学園ここの理事長は俺の親父だ」

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