第33話 フィナーレ。ROAD TO NOWHERE

10年後、極東連邦共和国首都ブラヴァ。


 数ヶ月前に極東連邦の首都に完成した『ブラヴァ・ドーム』。

大統領でもあるが巨大石油会社のオーナーでもあるアレクが私財を投資して作らせたアレクの所有物である。やはりアレクも旧ロシア圏の人間だからだろうか、とにかく巨大な建造物が好きなようであり、15万人収容で各種スポーツや見本市会場、そして音楽イベントも行える世界最大の多目的ドームである。

 施工主は、アレクと秋山社長の縁で菱菱商事が請け負ったらしい。

ちなみに秋山社長とは以前の繊維課秋山部長と同一人物である。

(補足:リエと秋山社長の縁で菱菱商事は「RIE NAKAGAWA」というアパレルブランドを出している。)


 築地ジャイアンツ・スタジアムに続きブラヴァ・ドームでも『仲河リエ』が 柿落としを務めるようだ。スタンドもフィールドもギリギリまで観客が入り、主催者から19万人入場と発表されるとドーム内から「おしい~」とどよめきが起こった。


————————————————————————————————————


 リエとアレクは記者会見プロポーズの後スグに結婚した。

リエは当然ながら極東連邦共和国大統領のファーストレディになり、大統領夫人として陰からアレクを支えていきました・・・・・・・・・・ではなく。

 アレクの熱心な勧めもあり、歌手を継続することになった。

アレクがSOMYレコードを完全支配してる為、リエはなんの制限もなく自由にアルバムを作りヒット曲を連発し、日本やアジアだけでなくヨーロッパやアメリカ大陸でも巨大アリーナコンサートを開くまでの世界的な歌手になった。


ちなみにH@RUKAはリエのプロデューサーとSOMYレコード副社長も兼任しており、H@RUKAとレオナルド・クルーズの結婚生活はレオの浮気で破局した。


 リエは歌手をしながらファーストレディも務めた。自国内でも大統領よりも人気者であるだけでなくアレクが外遊すると大統領本人よりも訪問国で人気が出るほどであり、リエには優しいアレクも嫉妬するほどだった。

 順調すぎる人生を歩むリエだったが、アレクからのプロポーズの5年後に、リエの母が発病から1ヶ月ほどで悪性の脳疾患で亡くなった。アレクも最高の医療を投入して全力を尽くしたがダメだった。

 しかし、リエとアレクは困難を乗り越え、それから1年ほどしてリエとアレクの間に初めての子供が産まれた。女の子で名前は「エカテリーナ・花子・フローロヴィチ」と名付けられた。


 同時期に(旧:若山)島本歌子は三人目の子供を出産して高円寺の氷川神社前でカフェを経営している。旦那の健吉は高円寺を中心とした中央線一帯で古着屋や飲食店を経営する実業家として活躍中である。


————————————————————————————————————


ブラヴァ・ドームの出演者バックステージ。

 リエの控室前。娘の花子の横で所在なさげにウロウロ歩き回っているアレクの元を近藤明日香が訪れる。花子はiPADで日本初で世界中を席巻してる漫画アニメ「バッくん」を見ている。

「アレク君、2期目の大統領がそんなにソワソワしてたら、極東の国民にも花子ちゃんにも笑われるわよ」

「ああ、明日香さん。ソワソワって、だってリエちゃんのステージが成功するか心配なんですよ。19万人の観客ですよ」

近藤明日香がアレクの娘の花子を抱き上げながら言う。

「あんたが馬鹿みたいにこんな大きなドーム作って、馬鹿みたいな人数入れたのが悪いんじゃない。まっ、リエちゃんは問題なく歌い切る事ができるから心配ないけどね」

「はぁ、ところで明日香さん幹事長就任おめでとうございます。あとYOJIROさんは試合に出るんですか?」

「そおなのよ、50手前で復帰するっていって、20代前半のチャンピオンとロンドンで試合するらしいわ。そのトレーニングでテキサスに行ってるの。男っていつまで立っても馬鹿よね~。こんな大きなドーム建てたり、年寄りになって殴り合いしたり」花子をあやす近藤明日香。

「ハハハ」頬をポリポリかくアレク。

「アレク君、旦那のスポンサーもやってあげてね。それと、トオル君は警察官に転職してから出世して機動隊の隊長をして忙しいみたいよ。リエちゃんみたいなかわいい奥さんをもらったし」

「トオル君、結婚したんですか?それはめでたい」

「トオル君から『今日は来れなくてすいませんアレク兄貴に言っといて下さい』って言われたから。それとね、あんた達は嫌がるだろうけれど・・・・・ちょっとーこっち来なさいよ。幹事長命令っ!」近藤明日香が廊下の向こうに声をかける。


 沖田が気まずい感じでアレクの前に姿を出した。

「うわあ、明日香さん悪趣味!」アレクも嫌そうな顔をする。

「沖田君が嫌がってたけど、偉い政治家の権力を利用して私のSPとしてココに連れて来たの。沖田君、アレク大統領に挨拶、挨拶」

沖田が顔も見ずにアレクに近づく

「おー、久しぶり」

「あー」アレクも沖田の顔を見ない

「バカ大統領、死ねっ」

「何テメー、大統領に死ねと言ったな。ウチの刑務所ブチ込むぞ!」

「上等だよ、かかってこいや!」

互いに胸ぐらを掴み殴り合う合うアレクと沖田、それをケラケラと笑って見てる近藤明日香が花子に言う。

「私、これを見たかったのよ!お父さんとコノおじさんね、馬鹿だけど仲がいいのよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る