第30話 君は薔薇より美しい。KOENJI GRAND HOTEL
お金が沢山あるだけでは泊まれない、偶然のタイミングか縁か紹介がないと泊まれないクラシックホテル。高円寺グランドホテル。
同ホテル内スイートルーム。
2年振りの再会をしたリエとアレク。天蓋付きのベッドで熱く深く愛し合っていた。
ビデオ通話しかしてなく、久々に実際に会えた二人の情熱は炎の様に燃え上がった。
愛を重ねた後、ベッドに裸でシーツだけに包まれて寝ている二人。リエはアレクの腕枕で寄り添っている。
「リエさんのライブ、初めて見れて感動しました。最初の公園で歌ってくれた時や焼き鳥屋でデュエットした時よりも歌の全てが上手くなってましたね」
「アレクさん、ありがとう。今日は私達の知り合いが全員来てくれて嬉しかったです」
「スタジアムのVIPルームで、リエさんのお母さんに会いましたけど少しだけなら車椅子なしで歩けてましたね。回復して何よりです」
「そおなんですよ、アレクさんが帰ってから母の容態が急によくなって、ワタシのコンサートを見に行けるまでになって。ところでアレクさん、極東連邦の方では順調ですか?」
「ええ大統領になってから不穏分子もとりあえずは一掃出来まして、ビデオ通話で僕が言ってた反重力ユニットの生産工場も稼働開始しますし、日本の領土になった樺太島経由で日本本土へ繋ぐ極東の石油パイプラインも完成間近ですからね。GDPもグンと上向きそうです」
「それなら、アレクさんの方も順調じゃないですか」
「リエさんの方でも、H@RUKAさんにリエさんの専任プロデューサーしてもらって大正解ですね」
「ええ、H@RUKA先生はすごいですよ。厳しいですけど、ワタシの能力を引き上げてくれて、ワタシまだまだ自分の能力を伸ばせそうな気がします。あっ、旧若山さん島本歌子さんが言ってましたけど、アレクさん、また沖田さんと揉めたんですってね。馬鹿じゃ無いですか?大統領にもなって、高校生みたいな喧嘩しないでくださいよ。ワタシが恥ずかしい」リエがアレクの腕を掴む。リエの動作にキュンとなるアレク。
「いやあれは、アイツが馬鹿だから・・・・リエさん、今『ワタシが恥ずかしい』って言ってましたね」アレクはリエの顔をバッと覗き込む。アレクの中で何かがあった様だ。
「ええ」目の前のアレクが、リエ自身を見てるようで見ていなく、何かを高速で思考してると訝しがるリエだった。
推理小説でよくある「点と点が繋がった」という現象、脳内での化学反応が今、アレクの脳内で起こった。アレクにとってリエは大事な恋人だが、自分やリエが互いに多忙すぎる事もあり忘れていた大事な何かが抜けているモヤモヤ感がこの2年間に心のどこかに存在していた。しかし、リエの『ワタシが恥ずかしい』という言葉によって、アレクの中で全てが解決された。
「リエさん」
アレクはリエを片手で抱き、二人で上半身を起こす。
「どうしたんですか?」
アレクはベッドから降り
「リエさん!」
と両腕をリエに向かって突き出したが、ハッと自分が裸である事に気付き
「ちょっと待って下さい」
とスイートルーム内を見回して、続きの隣部屋に小走りで消えて行く。
「アレクさんどうしたんですか?」
天蓋付きベッドの上で、裸にシーツだけを首まで被ったリエはアレクの奇行を怪訝に思った。
隣部屋から、ガサゴソと大きな音が聞こえるかと思えば、アレクがリエの元に戻ってきた。
「プッ!アレクさん、なんですか?」
アレクを見て吹き出すリエ。
戻ってきたアレクは、大きな乳白色の布を右肩と両腕だけ露出させて全身に巻きつけ、腕は後ろ手を組んでいる。
アレクさんが身につけてる布は隣部屋のカーテンだよね、強引に剥ぎ取って身に付けたか、後で健吉さんに怒られそう、この人以外とおバカだなと思ったリエだった。
アレクは、天蓋ベッドに上体を起こして座るリエの元に行き
「リエさん、裸じゃダメだと思いこんな格好になりました。ローマ帝国みたいですね。ハハッ・・。今回はリエさんのスタジアムコンサートを観にくる目的オンリーで日本に来ました」
「はい・・」アレクの言葉に何か意味があるのか予想できないリエ。
「あの~、僕はリエさんを愛してます。好きです。でもリエさんはスーパースター、僕は大統領職。どちらも忙しすぎて順調です。この僕らの幸せな状態を壊してはいけないと本能的に考えてしまい、僕は二人にとって大事な何かを忘れてるのか、勇気がなく一歩踏み出せなかったのか・・・先程のリエさんの言葉『ワタシが恥ずかしい』で僕は解りました。僕らは日本の言葉で言う『一心同体』なんですね」
「あ・・・・」
リエはアレクが何をやろうとしてるのか分かって、目に涙が浮かぶ。
アレクは片膝をつき後ろ手にしていた両手を前に出す。右手には1本の薔薇の花があった。隣部屋の1輪挿だとリエは思った。
片膝をついた大男のアレクと上体を起こしてベッドに座ってるリエの目線の高さがちょうど同じだ。
「リエさん、僕と結婚してください。一生幸せにします。急なプロポーズなので、指輪はありませんが1本の薔薇でお許し下さい。あなたは薔薇よち美しい」
リエは差し出された薔薇を受け取り
「よろしくお願いします。ワタシもアレクさんを幸せにします」といった。リエの顔は涙で溢れている。
「リエさん、結婚してもらえるんですか?」
「当然ですよ!」
「YEAH!」アレクは叫び、片膝から立ちあがり歓喜のジャンプをしたが、苦労して急造したローマ帝国風の布コスプレが外れ、素っ裸状態になる。
「OH、リエさん裸でごめんなさい」とアレクは謝ろうとした時。リエは被ってたシーツを勢いよくはだけて立ち上がり、薔薇を持ったままベッドからアレクに飛びつく。
アレクは、飛んできたリエを器用にお姫様抱っこ状態でキャッチし、笑いながらクルクル回っている。ちなみに二人とも裸だ。
「ハハハハハハハハハハ」
「アレクさん危ない危ないっ、目が回りますよ」
「ハハハハハハハハハハ」
アレクが回るのを止めて、お姫様抱っこ状態で自分の腕の中にいるリエに言う。
「僕らは結婚するんですよね」
「はい」リエはアレクの首に両腕を絡める。
「リエさん、明日は忙しくなりますよ。僕は大暴れします!待っててください。3つプレゼントをリエさんに渡します」
「大暴れ?危険な事しないでくださいよ。プレゼントって何ですか?」
「明日の僕はある意味危険でしょうね。秘密です」
裸で情熱的なキスをするリエとアレクだった。
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