第19話 ライブ直前。I SHOT THE SHERIFF

リエの初ライブの日の夕方。

 家を出るリエとアレク。

「行きましょうか」

「はい」

「リエさん、リラックスリラックス」

リエの緊張をほぐすアレクだった。


ライブハウスへの道すがら

「私の初ライブなんで1番前で見てくださいよ」

「僕は2mあってデカイんで、周りの人の迷惑になります。後ろの方から見ますから」

「えぇ、前で見て欲しいのに~。アレクさん、どれくらいライブに呼んだんですか?」

「みんな呼びましたよ、若山さんと健吉さんとトオル君、秋山部長夫妻、繊維課の来れる皆さん、政府役人の近藤明日香さんと刑事の旦那、H@RUKA先生と先生のスタッフ、ウチの妹と映画会社のスタッフとまだ滞在中の俳優のレオナルド・クルーズと付き人かな」

「えっつ、レオナルド・クルーズ来ちゃうんですか?すっごーい。あっ、ところで公安の沖田さんは来ないんですか」

「あいつは嫌いだから呼んでませんよ、殴り合いになりそうですから」

「フフ、高校生のオニイチャンみたいですね2人とも」

「でもね、近藤さんからあとで聞いたんですが、沖田がイタズラ心で僕にリエさんをアテンドしてくれなかったら、僕らの恋愛は生まれなかったしリエさんのライブもなかった。その点だけはアイツに感謝してますね」

「へぇ、それなら沖田さんが恋のキューピッドなんですね。今度、沖田さんにお礼言っときます」

手を振って否定するアレク

「いいですいいです。あいつにお礼なんか言わなくていいです。ほっとけばいいですから。アイツは嫌いだ、いつか殴る」

「はは、仲良いんですね」


————————————————————————————————————


 ライブハウス「REY MOMO」の入り口には既にリエの身内が集まっていた。俳優レオナルド・クルーズが菱菱商事繊維課女子社員たちをナンパしているが、付き人に止められてる。

 そこへリエとアレクがやってきたのに気づいた若山が声をかける。

「あ~リエちゃんとアレクくんが来たわー、リエちゃん頑張ってね」

「はいっ若山さ・・」

リエが返答し終わらないその時。

ドッという重い音とともにアレクが一瞬棒状にピーんと体が伸びた後、地面に倒れる。うつ伏せに倒れたアレクの背中の右部分からジワジワと赤黒い血が滲んでいく。

「キャー」リエは悲鳴をあげアレクに駆け寄る。

 他の客からも悲鳴が上がり騒然とするライブハウス前、近藤洋次郎が警察手帳を掲げ

「警察です。皆さん落ち着いて下さい。とりあえず危ないのでライブハウス内に入って下さい」と客達に指示する。

 秋山部長が率先して客をライブハウスに誘導する。

「若山さんとH@RUKAとトオル、ちょっと耳かして」健吉が耳打ちする。

耳打ちされた3人は驚きの表情になり、了解した若山はライブハウス内の群衆内へ入っていき、H@RUKAはライブハウスの中へ、トオルはライブハウスの外の近藤洋次郎の元へ行く。


 ライブハウス前で横たわってるアレクに付き添うリエと近藤明日香と近藤洋次郎。

近藤洋次郎は辺りを警戒しながらスマホで何か話している。

「アレクさん、アレクさん、大丈夫?死なないで」

「リエちゃん、しっかり気を持って。もうすぐ救急車が来るから」近藤明日香はリエに寄り添い落ち着かせようとした時「早っ!もう救急車きたわ」示し合わせたかの様に救急車がタイミングよくリエ達の元に来た。

 救急車内に運び込まれるアレクに付き添おうとするリエだったが息絶え絶えのアレクに止められる。

「リエさんダメだ。リエさんは、みんなの前で歌って下さい。僕は防弾チョッキを着てたから死にはしないです。歌ってきて下さい」

「でもアレクさん、血がいっぱい出てるよ・・・」

「早く行って下さい」アレクが救急隊員に死にそうな声で言う。


リエは近藤明日香に抱きしめられ、去っていく救急車を見送っていく。

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