寒い国から来たあなたへ

越川千太郎

第1話 INTRO〜リエの日記。DAY IN DAY OUT

×月△日(水) 晴れ


 今日もそつなく会社で仕事を終えた。仕事内容は厳しいが、ワタシ自身が楽しんで仕事できてるからいいとしよう。

 職場のセンパイ若山さんや秋山部長をはじめとした繊維課の人達は、恐ろしく優秀だ。日本でもトップクラスのビジネスパーソンなんだろう、その上ワタシには身内の様に優しく接してくれて色々と教えてくれて守ってくれる。

 契約社員だが恐ろしく給料がいい。この職場に骨を埋めるのもアリかもしれない。


 でも、ワタシは歌手を目指す夢をあきらめるのは嫌だ、嫌だ、嫌だ。

できる限りスタジオに入って声を出し、作詞作曲してたくさんの曲を作りたい。でもSNSに曲をアップするのは、どんな評価が返ってくるから怖い。

それではダメだと思うけど怖い。ワタシは勇気が欲しい。

 

 母親はずっと寝たきりで昏睡状態だがいつか目を覚ますのだろうか?ワタシの唯一の肉親である母親が一生起きないのは辛いものがある。


 仕事場から帰ったら食事をして、SNSで動画を見るかテレビを見るか、音楽の練習や曲を作って、少しお酒を飲んで、風呂に入って寝る。そして明日になったら、決まった時間に会社に行き仕事が終わったら家に帰るの繰り返し。


 嬉しい事があってもそれを話す人がいない、悲しくても聞いてくれる人がいない、怒りを受け止めてくれる人がいない。美味しいお酒や、不味いラザニアの話題を分かち合える人がいない。



そしてワタシは一人、一人、一人、一人、一人。



こうして人生を終わっていくのだろか。怖くて悲しくなる。

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