第351話 バッファー兼タンクは厄介よ
レオルド達が邪神復活を阻止するために動き出している頃、同じように動いている者達がいた。ジークフリート達である。レオルドとは違う経緯で教皇の企みを知り、密かに動いていたのだ。
とは言ってもレオルド達とは違い、何の計画もないが。勿論、流石に教皇の元まで行っていきなり断罪するとかはしない。その辺りは、エリナやアナスタシアが止めている。
「アナ、どうするんだ? 教皇が邪神を復活させるって分かったけど、どうやって止めるんだ?」
「阻止するのは難しいかもしれません。猊下の下にはブリジットが控えていますから」
「あー、聖騎士の中で一番強いんだっけ?」
「はい、恐らく、今のジーク様よりも強いかと……」
少々言いにくそうにアナスタシアは事実を述べる。何も間違ってはいない。ブリジットは聖騎士の中で、いいや、聖教国で一番強い存在だ。ジークフリートも強いのだがブリジットには劣る。
「そうか……。それじゃあ、強行突破とかは難しいか」
「はい。ですが、希望はあります」
「希望? あっ、もしかしてレオルドか?」
「そうです。ハーヴェスト辺境伯も恐らくは猊下の企みを看破しているでしょう。何かしらの対策を練っていると思います。協力を取り付けることが出来れば邪神の復活も阻止できるかもしれません」
「確かに。レオルドなら……」
アナスタシアの言葉を聞いて思案するジークフリートだが、どうしても不安な事がある。それはエリナとクラリスの事だ。エリナはレオルドを目の敵にしており協力するのは難しい。クラリスの方は過去の因縁があるので、こちらも協力は難しいだろう。
とは言え、自分達だけでは教皇の企みを阻止するのは極めて困難だとジークフリートはみている。戦力も不十分、情報も足りない。流石に今の状況下では不可能に近いだろう。
しかし、だからと言って何もしないわけにはいかない。このまま教皇を見過ごせばどうなるかなど容易く想像できる。邪神が降臨すれば間違いなく聖都は混乱に陥り、多くの人間が犠牲になるだろう。
それだけは阻止しなければならない。何も知らず平穏に過ごしている人々の安寧を壊してはならないとジークフリートは決意する。
「レオルドと交渉してくる」
『ええッ!?』
ジークフリートの発言に、その場にいた全員が驚いた。
「ちょ、ちょっと、ジーク! レオルドと交渉するってどういうこと?」
「言葉のとおりだよ、エリナ。俺達だけじゃ、この問題は解決できない。だから、レオルドにも協力してもらうんだ。いや、違うか。俺達が協力できるか聞かなきゃな」
慌てているエリナにジークフリートは淡々と説明した。その説明中にジークフリートは協力してもらうのではなく、自分達が何か力になれることがあるかどうかを聞くことにした。
「な、なんで私達が協力させてもらうのよ……」
「エリナ。分かってるだろ? きっと、レオルドは俺達以上に情報を集めてるし、その上で対策も練っているはずだって」
「ッ……! それはそうかもしれないけど……!」
確かにジークフリートの言うとおりだ。エリナは認めたくないが、レオルドがこれまでに積み上げてきた功績を考えれば、教皇の企みを看破して対策を練っているに違いないということは想像出来る。
「だから、レオルドの所へ行って話してこようと思うんだ。俺とアナだけで行こうと思う。他のみんなは待っててくれ」
「待って。私も付いていくわ」
「いいや、ダメだ。エリナは待機していてくれ」
「どうして? 私もいた方が交渉はしやすいでしょう!」
「ごめん。今のエリナだと間違いなく門前払いにされる。少し落ち着いて欲しいんだ」
「ッ……」
そう言われるとエリナも自覚する。自分が感情的になっており暴走している事を。
「……ごめんなさい。少し頭を冷やしてくる」
感情的になってしまいジークフリートを困らせてしまった事にエリナは自身に嫌気が差した。一度、冷静になろうとジークフリートの前から立ち去ろうとする。
自分の前から立ち去ろうとするエリナを見て、ジークフリートは声を掛けようかと迷ったが今の彼女に何を言っても意味がないかもしれないと思い、声を掛けなかった。
それから、ジークフリートはすぐに出かける準備をしてアナスタシアと一緒にレオルドの元へ向かう。
レオルドがどこにいるか分からなかったジークフリートだが、アナスタシアが街にいる聖騎士から居場所を聞きだした。
「ここに泊まってるのか……」
「はい。そうみたいです。シルヴィア殿下とハーヴェスト辺境伯が宿泊しているはずです」
「ありがとう、アナ。それじゃ行こうか」
「はい!」
二人はレオルド達が宿泊している宿へ入り、店主にレオルド達に訪問してきた事を伝えると、店主はすぐにレオルドへ告げた。なにせ、聖女が来たのだから聖都の人間であれば従うしかない。
店主が戻ってくるまで受付の方で二人が待っていると、店主とイザベルがやってきた。店主の方は頭を下げてから奥の方へ引っ込んでいき、残ったのはイザベルとジークフリート達の三人だけとなった。
「レオルド様がお会いするそうです。付いてきてください」
「は、はい」
イザベルの後ろを付いていく二人はゴクリと喉を鳴らした。いよいよレオルドと対面するときが来たと緊張する二人。
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