第306話 つまり、自腹を切ればいくらでも爆破していいという事ですね!
翌朝、目が覚めたレオルドは日課の鍛錬を行い、その後朝食を取り、ゼアトへ一時帰宅する。レオルドがゼアトに戻ると、文官達が押し寄せて溜まりに溜まった報告書をレオルドへ提出した。だが、レオルドが戻ってきたのは仕事の為ではなく、国王からお願いされているシルヴィアが持つ神聖結界の代用品を作るため。
だから、レオルドは大きな隈を作ってゾンビのような見た目をしている文官達から逃げてルドルフを探す。ルドルフは研究所にいたのであっさりと見つかり、レオルドは何の説明もなくルドルフを連れて王都へ戻る。
王都へ戻ったレオルドは追いかけてきていた文官達を振り切ったので安堵のため息を吐く。
「ふう、ようやく撒いたか」
「レオルド様。いきなり連行されて訳がわからないのですが説明はしていただけるので?」
「ん? ああ、まあ、ルドルフには国王からのお願いを手伝ってもらおうと連れてきたんだ」
「ほう。それでどのような内容なのですか? 私を連れてきたということは少なくとも穏やかな内容ではないのでしょう?」
「いや、なに物騒な考えになってんだ。普通に穏やかだわ!」
「それはそれは、珍しい。私を呼んで穏やかなお願いとは?」
「まあ、歩きながら話そう」
ルドルフはゼアトでもぶっちぎりの虚弱体質なので少し走るだけで息を切らす。なので、レオルドはルドルフを担いで走っていたのだ。しかし、今は追いかけてくる文官達もいないので走る必要はない。だから、もうルドルフを担いでいる必要はない。レオルドはゆっくりとルドルフを地面に下ろして、二人並んで歩き始める。
「ルドルフ。お前を呼んだのはシルヴィア殿下の持つスキル、神聖結界に代わるものを開発するためだ」
「そうなのですか。しかし、おかしい話ですね。確か、シルヴィア殿下の神聖結界は多くの研究者が解明して代用品を作ろうとしているはずです。ですから、我々にその話が回ってくるのは不思議なのですが?」
「うむ。お前の言うとおりなんだが、まだゼアトには俺とシルヴィア殿下が婚約したことは伝わってないのか?」
「おや、それはおめでとうございます。しかし、初耳ですね。今知りましたよ」
「転移魔法陣が普及しているから情報の伝達も早いと思うんだが……まあいい。そういうわけでシルヴィア殿下の神聖結界に代わるものを俺が作らねばならなくなったんだ」
「あー、そういうことですか。シルヴィア殿下は王都から離れることが難しい。そして、婚約されたのでいずれはレオルド様の元に嫁ぐことになるから王都を離れる必要がある。ですから、レオルド様にお願いするしかなかったと、国王陛下は。なるほど、なるほど」
「理解が早くて助かる。早速、今日から王都の研究所に向かい、シルヴィア殿下の神聖結界に代わるものを作るぞ」
「承知しました。ところでシャルロット様はご協力されるので?」
「勿論だ。俺達三人を中心としてチームが作られる。まあ、選抜するのは俺だけどな」
「おお、それは素晴らしい。研究者としての血が滾りますね!」
ルドルフは歓喜する。レオルドは最高の上司であり、多少の責任なら全て背負ってくれるので、ある意味免罪符だ。それに加えて圧倒的な知識量を誇る世界最強の魔法使いシャルロットまでいる。かつて三人で魔法陣や魔道具を開発していた日々が再びやってくるのだ。これを喜ばずして何を喜べばいいとルドルフは期待に胸を膨らませるのであった。
それから二人はシャルロットと合流して王城へ向かう。まずは国王に報告してから研究所へ向かう手筈になっている。報連相は大事。とても大事。なにせ、この三人は特大の爆弾扱いされている。理由はゼアト防衛戦で見せた数々の凶悪な大量殺戮魔法を開発したから。そういうわけで報連相は必須なのだ。この三人が何を仕出かすか分からないので。
国王の元へ報告にきたレオルドは二人を背後に侍らせて、今日から神聖結界に代わるものを開発していくことを報告する。
「レオルドよ。一応、言っておくが爆発とかはさせるなよ?」
「……保証しかねます」
「レオルド辺境伯! もしも研究所を爆破でもしたら、その時は修理費用を請求するからな!」
国王の側にいる宰相がレオルドに忠告する。それを聞いてレオルドは目を輝かせる。自腹でいいなら、いくらでも建物を吹き飛ばしていいんだと理解したレオルド。解釈違いである。宰相が言いたかったのは自腹を切りたくなかったら妙な真似はするなということ。それを勘違いしたレオルドは深々と頭を下げて返事をする。
「承知いたしました! このレオルド・ハーヴェスト。粉骨砕身、頑張らせていただきます!」
妙に気合が入っているレオルドを見て国王と宰相は不安を抱くが、目の前にいる三人に頼るしかない。なにせ、これまでに多くの費用を投じておきながら神聖結界に代わるものを作ることが出来なかったからだ。だから、優秀ではあるが問題児の三人に頼るほか手はなかった。
その後、レオルド達が去っていく姿を眺めながら国王と宰相は話し合う。
「大丈夫だと思うか?」
「わかりませぬ。あのときの、辺境伯の顔はなぜかとてつもなく輝いておりましたが猛烈に嫌な予感が脳裏を
「ああ、それは私もだ。レオルドは確かに良い方向へ変わったが時々昔以上に悪い方向に変わったと思う時もある。それがまさにさっきだ」
「何も起きなければいいのですが……」
「一応、騎士の配備を増やしておけ」
「わかりました。指示を出しておきましょう」
そう言って宰相は国王に一礼し部屋を出ていく。一人、残された国王は研究所の方を眺めながら溜め息を吐くのであった。
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