第81話 言質いただきました

 レオルドはゼアトの事を文官に任せてギルバート、バルバロト、イザベルの四人で古代遺跡へと調査に向かった。


 険しい道のりになるかと思いきや、古代遺跡は意外な事に平原にあった岩山に存在した。魔法で入り口を隠蔽されていてレオルド以外の三人はとても驚いていた。レオルドは真人の記憶で知っていたので驚きはしなかったが、ゲームと同じようなシチュエーションに感動していた。


「さて、これより古代遺跡の調査を行う。分かっていると思うが、中には危険な罠や強力な魔物が存在している場合がある。気を引き締めて行くぞ!」


 レオルドの掛け声と共に、四人は古代遺跡へと入っていく。


 古代遺跡の中は石造りになっており、迷宮ダンジョンのような形をしている。そして、所々に罠が仕掛けられており、初見なら間違いなく苦戦するのだがレオルドは真人の記憶で罠の配置をある程度覚えている。

 おかげで罠に引っかかることなく順調に先へと進んでいくレオルド一行。しかし、レオルドの後ろを着いて行く三人は疑問を抱く。順調に進んでいるのは喜ばしい事なのだが、レオルドが罠を正確に見分けるのだ。これは、あまりにも怪しい。まるで、一度訪れたことがあるかのように思える。


「レオルド様。先程から正確に罠の位置を看破していますが、一度訪れたことがあるので?」


 イザベルの質問にレオルドは答えない。いや、答える事が出来ない。だって、レオルドは基本的に外出する場合はイザベル、ギルバートを共にしており、一人で外へ出たことはない。

 そんなレオルドが何故古代遺跡の在処を知っており、さらには古代遺跡に仕掛けられていた罠の場所まで把握しているのか。その答えは真人の記憶なのだが、信じてもらえるかどうか。そもそも、絶対的なアドバンテージである真人の記憶は口にすべきではないだろう。


「俺にも秘密がある。それだけだ」


「誤魔化しましたね? まあ、いいです。いずれ、必ず突き止めてみせますので」


「好きにしろ」


 それ以上レオルドは答えることなく、先へと進んだ。イザベルも納得はしていないが、これ以上追求しても何も得られ無いだろうと理解する。


 しばらく、四人は一切の会話なく古代遺跡の奥へと足を進めた。レオルドの案内により、最短で奥へと進んでいく。道中、レオルドも忘れていた罠に引っかかることもあったが、怪我をすることなく最深部へと辿り着く。


「ここだ……」


「この扉の先に何かあるのですか?」


「ああ。だが、扉を開けると守護者と言えばいいのかは分からないが一体の魔物が出てくる」


「その魔物はご存知なので?」


「ゴーレムだ。しかも、ただのゴーレムではない。ミスリルで作られた魔法耐性のあるゴーレムだ」


「なっ!? ミスリルゴーレムですか! 少々、厳しい戦いになりそうですね……」


「だが、勝たなくてはならん。それに、俺はここにいる四人ならミスリルゴーレムは相手では無いと思っている」


「分かりました。坊っちゃまが望むのであれば私は従いましょう」


「私もこの剣はレオルド様の為に振るいましょう」


「私はシルヴィア様の部下ですけど、今はレオルド様に従いますよ」


「ありがとう、三人とも。では、行くぞ!」


 最深部へと続く大きな扉をレオルドがこじ開ける。ゴゴゴッと音を立てて扉が開き終わる。四人は中へと足を進めて、止まる。


 四人の視線の先には鈍く光るミスリルゴーレムが佇んでいた。四人がミスリルゴーレムを確認した時、ミスリルゴーレムも不届きな侵入者を確認した。


「来るぞ! 散開!」


 重たい身体を持ち上げたミスリルゴーレムがレオルド達に襲い掛かる。動きこそ鈍重ではあるが、繰り出される攻撃は計り知れない程の破壊力を秘めていた。

 遺跡の床を粉砕したミスリルゴーレムはゆっくりと腕を上げてバルバロトへと標的を定める。


「ほう。俺か。古代のミスリルゴーレムが相手だ。出し惜しみはしない! 我が剣を受けてみよ!」


 バルバロトが部屋の中を駆け抜けてミスリルゴーレムへと迫る。ミスリルゴーレムはバルバロトを押し潰そうと足を上げる。だが、バルバロトの動きに追いつけない。

 バルバロトはミスリルゴーレムの足を掻い潜り、跳躍してミスリルゴーレムを斬りつける。


「はあっ!!!」


 ガギンッと嫌な音が部屋に鳴り響いた。バルバロトは傷一つ与える事が出来ずに着地して舌打ちをする。


「ちっ! なんて硬さだ!」


 悪態を吐いたバルバロトはミスリルゴーレムから離れる。その間にギルバートがミスリルゴーレムへと忍び寄り、渾身の一撃を叩き込む。


「では、私も一つ」


 ズガンッと本当にミスリルを殴ったのかと疑いたくなるような爆音が鳴り渡る。その音を聞いたイザベルは驚愕に目を見開いており、レオルドは顔を引き攣らせていた。


(相変わらず、化け物じみた強さだな。さて、ミスリルゴーレムの方は……げっ!)


 レオルドが目にしたのはビクともしていないミスリルゴーレムだった。確かにゲームでも耐久力は馬鹿みたいに高かったが、まさかギルバートの一撃にも耐えるとは思いもしなかった。


 そして、渾身の一撃を叩き込んだギルバートもビクともしていないミスリルゴーレムを見て、少々驚いていた。


「硬いとは思っていましたが予想以上ですな」


 ゼアト一の騎士であるバルバロトの剣で傷一つ付かず、伝説の暗殺者であるギルバートの渾身の一撃さえも倒すに至らないミスリルゴーレムにレオルドはどのようにして倒すのか。


(やばいな。想定していたよりもミスリルゴーレムが強い。一旦、出直して態勢を立て直すか?)


 逃げ腰になっているレオルドは本当にミスリルゴーレムを倒す事が出来るのだろうか。

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