第80話 ぐふふ、ついにゲーム知識で無双じゃい

 さて、レオルドは温めておいた計画を実行に移そうとしていた。マル秘ノートに書かれているのは、レオルドが持つ真人の記憶から引き出した運命48の攻略知識。

 そしてそれは、レオルドが死なない為にも必要な知識でもある。とは言っても、レオルドは原作では確実に死んでいる。死因は色々だが、主人公ジークフリートがどのヒロインを選んでも死ぬのだ。あまりにも理不尽。


 そういう訳なので、レオルドは真人の記憶から引き出した運命48の知識を使い、対策を練っているのだ。

 そして、今まではレオルドの都合上出来なかったが、ゼアトの全権を握り、尚且つ文官を雇った今だからこそ始動する時なのだ。


「ふっふっふ……」


 不敵に笑うレオルドはノートを見詰めて妄想する。この計画が実を結べば、レオルドは死亡フラグを回避することが出来るかもしれないからだ。


「よし……ゼアトの近くにある古代遺跡を調査して、最奥に隠された転移魔法陣を復活させる!」


 運命48は長い歴史の中に消え去った文明がいくつか存在している。その中には現代の魔法よりも高度な物が存在した。その一つがレオルドの述べた転移魔法である。

 遠くの場所へと一瞬で移動する魔法だ。昔は存在していたが今では使い手はいない。所謂、空間魔法は伝説のものとなっている。


 そして、レオルドが言うように世界には古代遺跡があり、その中には古代の遺産が残っている。ただ、レオルドは真人の記憶でゼアトの近くにも古代遺跡がある事を知っており、尚且つ最奥には転移魔法陣がある事まで把握している。

 これを使わない手は無い。何せ、転移魔法だ。失われた伝説の魔法で一瞬にして遠くへ逃げる事が出来る。

 つまり、レオルドは緊急避難用に転移魔法を活用しようとしているのだ。


 ちなみにだが、古代遺跡はトレジャーハンターがいくつか暴いている。古代遺跡から持ち帰った古代の遺産は現代からすればゴミ同然の物もあれば、再現するのが不可能な代物まである。一獲千金を狙ったトレジャーハンターは後を絶たない。


「さて……問題は転移魔法陣を復活させたらアイツが出てくる事だ。出来れば避けたい所だが、復活させた人間に興味を持つから避けられないだろうなぁ……」


 レオルドが愚痴るのはとある人物についてだ。これから、レオルドが向かう古代遺跡にある転移魔法陣を復活させるとエンカウントする事になっている。

 強制イベントな上に戦闘まで発生する。ただし、ゲームだと選択肢次第では戦闘を回避する事が出来る。


 だが、この世界はゲームでは無いので選択肢など出ない。故にレオルドの交渉力が重要となってくる。穏便に済ませれば良いのだが、本来は転移魔法陣を復活させるのはレオルドではなくヒロインの一人だ。

 つまり、レオルドが復活させるわけではないので、質問などされた場合はジ・エンドである。


 そして、どうしてレオルドがここまで憂いているのか。


 その最大の理由はこれから遭遇するであろう人物が、世界最強の一角だからだ。

 運命48の世界で最強と呼べるキャラは間違いなく有料DLCで追加された邪神なのではあるが、条件さえ整えれば単体で邪神を倒せるキャラが三名だけ存在している。

 その内の一人が今回遭遇するであろう人物だ。邪神は色々とギミックがあるが、近接、遠距離双方共に優れている。

 ただし、近接は世界で二番目であり遠距離でも世界で二番目だ。


 ここまで言えば分かると思うが、今回遭遇するであろう人物は遠距離、つまり魔法においては世界最強の人物だ。

 仮に戦闘になった場合、レオルドはギルバート、バルバロト、イザベルを引き連れていたとしても五秒も持たないだろう。それ程までに強い。


 しかし、それでも転移魔法陣はレオルドにとって魅力的である。放置するのはあまりにも愚か。だから、レオルドは覚悟を決めて古代遺跡への調査を決行することにした。


 早速、調査隊を組む為にギルバート、バルバロト、イザベルの三人を招集する。


「よく集まってくれた……」


 いかにも威厳のあるような振る舞いをするレオルドにイザベルが面白く思ったのか素直に思った事を口にした。


「全く似合いませんね。無駄に部屋を暗くする必要ありました?」


「お前は遊び心を知らんのかーっ!」


「生憎、持ち合わせておりませんので」


「ぐぬぬ……まあいい」


「ぐぬぬ、なんて言う人ホントにいるんですね、ぷふっ」


「消し炭にしてやろうか?」


「それで今日はどのようなご用件で?」


「お前の切り替えの早さにだけは俺も頭が下がるわ。さて、今日集まってもらったのは、ゼアトの近くに古代遺跡を発見したから調査に赴こうと思って、お前らを調査隊に組み込むからだ」


「なんですと? 坊っちゃま。本当に古代遺跡を発見なさったので?」


「ああ。だが、まだ誰にも言っていない」


「ちょっと、待ってください。レオルド様、確か古代遺跡は発見した場合は国王陛下に報告するはずでは?」


「その通りだ、バルバロト。だが、実際に報告するのは調査を行った後だ」


「それでは陛下に虚偽の報告をするので?」


「いいや、違う。あくまで発見したという報告はする。ただ、俺達が先に調査をしただけだ」


「屁理屈では?」


「確かにな。だが、古代遺跡は基本的に発見した者には優先権が与えられる。だからこそ、トレジャーハンターという職業の奴らが存在している」


「なるほど。大体は分かりましたが、調査隊は我々だけですか?」


「古代遺跡は危険なトラップが多数存在し、強力な魔物も潜んでいる。だから、少数精鋭がベストアンサーだ」


「つまり、決定事項なのですね?」


「ああ。ゼアトの領主代理として命令を下そう。ギルバート、バルバロト、イザベルの三名は俺に同行して古代遺跡の調査を行う!」


 こうして四人は古代遺跡の調査に向かうことになった。イザベルはシルヴィアに報告をしようとしたが、レオルドによって止められる。余計な事をされたくなかったからだ。

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