第61話 えらいこっちゃ! どないしよ!?
モンスターパニックもベイナードとの闘いも終わり、やっと無事に屋敷へと帰還して一息付けたレオルドは、自室に篭り、今回の件で思い出した事をマル秘ノートに書いていく。
マル秘ノートとは、レオルドが持つ真人の記憶から思い出せるだけの知識を記したノートだ。
基本的にはエロゲの攻略知識しか載ってない。あとは、中途半端に持っている現代日本の知識だ。
レオルドが活かせるかどうかは不明だが、脳内で保管しておくよりもノートに纏めておいた方が便利だろう。
「ふ~む……レジストされるのを忘れるとは」
ベイナート戦で魔法が効かなかったことには驚いたが、理由が分かればどうということはない。単なる自分のミスに過ぎないからだ。
まあ、レオルドがレジストをされる可能性を覚えていたとしてもベイナートには勝てないが。
レオルドは思い出したことを一通りマル秘ノートに記載すると、一息入れてマル秘ノートを厳重に隠した。
ちなみにこのマル秘ノート、レオルドの部屋を掃除している使用人にはバレている。ただし、内容があまりにもぶっ飛んでいるので、そういうお年頃なんだと思われ、生暖かい眼差しを向けられている。
しかし、そんなことは知らないレオルドは今日も呑気に食堂へと向かっていた。食堂からは食欲を刺激する香ばしい料理の匂いが漂ってくる。
テーブルには既に料理が並んでおり、後は主人であるレオルドを呼ぶだけとなっていたのだろう。レオルドが食堂に来たことで使用人達が一瞬驚くものの、すぐに仕事へと戻る。
もう慣れたのだろう。呼ばなくても勝手に食堂へと来るレオルドに。
「ギルはどこに?」
「執事長でしたら執務室におられます」
「ん、そうか。まあ、先に頂くとするか」
レオルドは席に着き、料理へと手を伸ばす。一つ、一つ噛み締めるように料理を楽しんでいるとギルバートが食堂に入ってくる。
レオルドは口の中に含んでいる料理を飲み込んで、ギルバートへと口を開く。
「どうかしたか?」
「大変です、坊ちゃま!」
「おお、お前がそんなに慌てるとは珍しいな。何があった?」
珍しいものを見たとレオルドは笑いながら、次の料理を口にすると、ギルバートからとんでもない一言が飛び出す。
「国王陛下から呼び出しでございます!」
「んぐっ!!!」
ギルバートの言葉にレオルドは口の中の物を噴出しそうになったが、既(すんで)のところで耐えた。
慌てて口の中の物を水で流し込むと、レオルドは口を開く。
「な、なにかの間違いでは!?」
「私もそう思いましたが、旦那様からのお手紙と共にこれが」
ギルバートが懐から取り出したのは封が切られている手紙と封がされたままの手紙である。レオルドは封がされた手紙を見て、思わず目を剥いた。
「そ、その手紙に押されている
ギルバートが取り出した手紙は間違いなく国王からのものだった。封蝋に刻まれているのは王家が使うもので疑いようのないものだ。
しかも、レオルドの父親ベルーガが絡んでいる以上、レオルドに断るという選択肢は存在しない。むしろ、断れば今度こそ死刑である。
「なんで俺が呼ばれたんだ!? まさか、今更死刑とは言わないよな!?」
「落ち着いてください、坊ちゃま。旦那様からのお手紙によりますと、今回ゼアト砦の防衛に貢献した功績を称えてとのことです」
「え? でも、俺は陛下にお呼ばれされるほどの功績は出していないが?」
「坊ちゃまは自己評価が低いようですね。坊ちゃまは魔法による多大な戦績を出しておりますよ。それにゼアトの騎士を誰一人として欠けることなくモンスターパニックを終息に導いたのです」
「そこまで大袈裟ではないだろう? 俺は確かに魔法で魔物を大量に殲滅はしたが、モンスターパニックを終息させたのはベイナート団長率いる騎士団じゃないか」
「はあ……いいですか? ベイナート団長率いる騎士団も多大な功績を挙げましたが、ここゼアトにおいては坊ちゃまを上回る者は誰一人としていないのです。もちろん、私もバルバロトもです」
「いやいや、そんなことはないだろう。バルバロトもギルも俺なんかより強い魔物を沢山倒したじゃないか」
「そうですね。しかし、求められるのは質より量なんです。モンスターパニックは。だから、その点で言えば坊ちゃまが一番なのですよ」
「む~……そうか?」
「そうです。ですから、王城へと向かう準備をしてください」
「え? 今から?」
「はい。今からです」
怒涛の展開にレオルドは目を回す。しかし、止まっている暇はない。国王陛下からの呼び出しとあっては断れるわけもないので、レオルドは急いで支度を整える。
支度を整えたレオルドは馬車に押し込まれて王都へと向かう。ギルバート、シェリアと共に三人で、実に半年ぶりの王都への帰還である。何が待ち受けているのかレオルドには何一つ分からなかったが、もしかすると運命48の物語に触れるかもしれない。
ただ、そんなことは今のレオルドには知る由もない。
内心ビクビクと震えながら、レオルドは馬車の窓から外の景色を眺めていた。
(帰りたい……)
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